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第10話 再会

 たたずむ桐谷の気配に気づいたのか、俊の足がとまる。  街灯の下の彼の位置からだと逆光になるため、立っているのが桐谷だとはまだ気づいていないようだ。……それとも俊はもう桐谷のことなど、すっかり忘れてしまっているだろうか?  訝しげにこちらを見る俊。悲しみとキツイ色を宿した瞳の表情は、昔の彼にはなかったものだ。 「……俊」  桐谷が名前を呼ぶと、彼の体がビクッと震えた。  桐谷は街灯の光が届くところまで歩を進める。  俊の瞳が大きく見開かれ、ひどく戸惑ったような、なんとも形容しがたい表情を浮かべた。 「……桐谷、先輩……」  発せられた俊の声はかすかに震えていた。  桐谷は、俊が自分のことを覚えてくれていたことに安堵とうれしさを感じた。 「久しぶり、俊」  立ち尽くす俊に桐谷は微笑んでみせる。 「やっと会えた……」 「先輩……どうして……」  別れた頃、彼はまだ声変わりの途中だったが、今は青年の声になっていた。それでもどこか当時の声音が残る、耳に心地よい甘い声だ。 「偶然、俊のいる場所を知ることができて、そしたらもう我慢できなくなって、来ちゃったんだよ」 「…………」  潤んだ大きな瞳が困惑に揺れる。

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