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第14話 敵対
続けて運ばれてきたサンドイッチをつまんでいるとき、俊がふと思い出したように聞いてきた。
「そういえば先輩、お仕事なにしてるんですか? まさか本当にモデルとか?」
「え?……いや、まさか」
桐谷は自分が刑事だということを言うべきか、迷った。
本当のことを言えばおそらく、この穏やかで幸福な時間は終わってしまうだろう。
……でも、桐谷はこれからも俊との付き合いを続けるつもりである。だとすればいつかは言わなければいけないことだった。
「……刑事」
「え?」
「オレは警視庁の刑事なんだよ、俊」
「――――」
沈黙が桐谷に重く圧し掛かる。
「桐谷先輩……」
俊が大きく目を見開き、一瞬とても苦しそうな表情になり、それからスゥッと無表情になった。
「俊、岬という喫茶店へ出入りしているそうだね……?」
「……それがなにか? 喫茶店へ行くことがなにか悪いことだとでも?」
口元に冷笑を浮かべ、攻撃的な口調で言い放つ。
「ただの喫茶店として通っているのなら、問題はないんだけどね」
「…………」
桐谷を睨む俊の瞳に胸が痛んだ。
「桐谷先輩、オレ刑事って大嫌いなんです」
「そう……」
俊が刑事を嫌うのはしかたがないと思った。今に至っても、犯人を捕まえることができていないし、事件当時、不快な思いをさせられたこともあったのだろう。
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