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第15話 敵対②

「でもオレは、おまえが危険な場所へ行くのを放ってはおけない。……おまえを守りたいんだよ、俊」 「大きなお世話です。自分の身は自分で守ります」  俊は前髪で顔を隠すようにして、言い捨てると、 「オレ、帰ります」  やにわに立ち上がった。そしてズボンのポケットから財布を出すと、テーブルに千円札を二枚置いた。 「いいよ。オレが強引に連れてきたんだから、奢るよ」  桐谷は俊の出したお金を彼のほうへ押し戻す。 「いりません」  頑ななまでの拒絶はいっそ痛々しいほどだ。 「……じゃ、送って行くよ。今タクシー呼んでもらうから」 「いいです、タクシーくらい自分で拾えますから」  前髪で隠された表情と感情を押し殺した声は、桐谷の心をえぐるように苛む。 「桐谷先輩」 「ん?」 「もう二度とオレの前に姿を見せないでください」 「……それは約束できないな。オレがどれだけおまえのことを捜したと思う?」 「別に捜してなんて欲しくなかった」 「…………」 「二度と姿を見せないでください」  俊はもう一度そう繰り返すと、振り返ることなくその場を去って行った。右脚を少し引きずるようにして……。  一人残された桐谷は、グラスに残っていたウイスキーの水割りを一気に飲み干した。  ……さすがにこたえたな。  彼にあからさまな拒絶を突き付けられて。  ……俊……。  不意に涙が零れそうになって、桐谷は必死にそれをこらえた。

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