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第16話 本心

 俊は帰り着いたマンションの自室でベッドにもたれかかり、乱れる気持ちを必死に静めようとしていた。  しかし、桐谷のことを思うと、いつまで経っても心は激しく乱れたままで、胸の鼓動は高鳴るばかりだった。  ……どうして今頃になって。  十三年前、誰とも知れない犯人によって突然家族を奪われ、俊もまた重傷を負わされ、右脚に後遺症を抱える体になった。  両親には親しくしていた親戚はなく、俊は十四歳で天涯孤独の身となってしまった。  俊から家族を奪った犯人は、半年が過ぎ、一年が過ぎ、世間が事件を忘れる頃になっても捕まることはなかった。  俊はこの十三年間、犯人への復讐心を糧に生きてきた。  警察はあてにならない。いつかきっと自分の力で犯人を見つけ、殺してやる。……その思いだけが俊をこの世に繋ぎ止めていた。  平凡な暮らしも幸せもなにもかも諦めて、復讐鬼となって生きる道を自ら選んだ。  ……それなのに……。  桐谷との再会は、俊を幸せだった過去へと逆戻りさせた。  バスケットボール部の一つ上の先輩。かっこよくて優しくて、初めは自分も桐谷のような男になりたいと憧れていた。やがてその思いは少しずつ変化して行き、いつしか淡い恋心を抱くようになった。……俊にとっての初めての恋だ。  だから彼が北海道へ行ってしまうと知ったときは、本当にショックで……。  離れたくなくて、泣きじゃくる俊に、桐谷は、約束のキスをくれた。  ――きっと戻ってくるよ。ここへ、俊の傍へ。絶対に――  そんな言葉とともに……。    でも、俊の家族を襲った陰惨な事件はなにもかもを壊してしまい、その後の運命も大きく変えてしまった。  

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