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第22話 事件の背景②

 確かに俊の父親は人一倍正義感が強い人だったから、例えば会社の不正などの秘密を知ってしまったら、なんらかの行動は起こしていたかもしれない。  でも、当時の父親にはそんな屈託があったようには思えなかった。  だとしたら、俊の家族はまったくの見当違いで殺されたことになる。  ……そんなの……あんまりだ……。 「……その代表と専務とやらは今どこでなにをしてるんだ?」  俊は声を振り絞って聞いた。 「秘密が守られたおかげか、会社はその後、何度か名前を変え、現在はかなりの成長をとげていて、そこの重役におさまっている」 「…………」  俊は強く唇を噛みしめた。  オオサキが感情のない目で俊を見おろす。 「で、あとはなにが知りたいんだ? 会社の秘密とやらか?」 「会社の秘密なんかには興味はない。……殺しを依頼した二人の自宅と大まかな一日のスケジュール、それから、そいつらが雇ったプロ。そいつを突き止めてくれ」 「代表と専務の自宅やスケジュールはすぐに調べがつくが、プロを特定するのは少し時間がかかるぞ」 「いいさ。十三年も待ったんだ。とにかく突き止めてくれ」  俊は愛らしい唇に不似合いな、自嘲めいた笑みを浮かべる。 「……余計なお世話かもしれないが、おまえに代表、専務、殺しのプロ。三人の男を殺せるとは思えないがな」  ピクリとも表情を動かすことなく、オオコシが言い放った。  俊は目の前の男を睨みつけた。 「確かに余計なお世話だよ。オレは何年かかっても、たとえ自分が死ぬことになっても絶対にそいつらを殺す……!」 「…………」  オオコシは俊のその言葉にはなにも返さず、カウンターテーブルの上に小さなメモを置いた。 「金さえ出せば、銃でも違法ナイフでも売ってくれる闇サイトのアドレスだ。……また情報が入ったら連絡する」  そう言うとオオコシは奥へと引っ込んだ。  俊はメモをポケットに入れると、結局一口しか飲まなかったコーヒーを残して岬をあとにした。

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