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第24話 復讐心と恋心の狭間で②
「おかえり、俊」
桐谷が穏やかに微笑み、名前を呼んだ。
優しい笑顔と声は、俊の心の奥深くにまで染み入り、今にも泣き出しそうになってしまう。
けれども俊は意地を張った。冷たい表情で桐谷を見やり、突き放すような声を出す。
「桐谷先輩、なにしに来たんですか?」
「おまえに会いに来たんだ。仕事が早く終わったから」
「暇なんですね。刑事って」
「たまにはね。……まあだからといって世の中が平和かというと、そうでもないんだけど」
「じゃあ、仕事に戻って、少しでも世の中を平和にするように努力したらどうですか?」
わざときつい口調で嫌味を言って、桐谷に嫌われるようにしむけながらも、心の奥では、彼に嫌われたくないと強く願っている自分がいる。……俊は二つの気持ちに引き裂かれてしまいそうだった。
「……それに、もう二度と姿を見せないで欲しいって、オレ、言いましたよね?」
「その約束はできないって、オレは答えたはずだけど?」
憎まれ口ばかり叩く俊にも、桐谷は変わらぬ優しい笑顔と声で接してくれる。
彼を前にすると、脆い自分がむき出しになって、桐谷に縋りついて泣いてしまいそうになる。
……ダメだ。自分はもう希望も未来も捨てて、ただ復讐のためだけに生きると決めたのだから。
俊は弱い自分を振り切るように鋭利な声を出した。
「刑事のくせにストーカー行為ですか、先輩。もう会いたくないって言ってるでしょう!? 迷惑なんです!!」
切りつけるような俊の言葉を聞いた瞬間、桐谷がひどく辛そうな表情を見せた。
「……迷惑か」
桐谷のその呟きはどこまでも悲しそうで……。
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