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第36話 衝突

「桐谷先輩、こんなところにまで連れてきて、本当にいったいなんの用なんですか?」  桐谷が生活している空間、彼の香り、こんな愛おしい場所に身を置いていると、俊は復讐鬼として生きることができなくなってしまう。ずっと犯人に復讐するためだけに生きてきたというのに……。 「大切な話があってね」  桐谷は切れ長の瞳で真っ直ぐに俊を見つめた。 「……なんですか?」 「俊、十三年前の事件の犯人への復讐を考えているなら、やめるんだ」 「なっ……」 「オレが思うに、犯人は犯行を依頼した者と実行犯の複数なんじゃないか? それくらいはもう岬で情報をもらっているんだろ? はっきり言って、おまえがどうあがいたって敵う相手じゃない」 「そんな、どうして、どうしてそんなこと先輩に言われなきゃいけないんですか?」  俊の声が震える。 「事件のことは警察に任せろ。今現在も捜査は続けられているんだ」 「警察なんかあてになるもんか! 十三年間、なにもできなかったくせに」 「なにもしてないわけじゃない。専従班が血眼になって犯人を捜している。オレも個人的に事件のことを調べてる。……情けないことにオレの力では大したことはできないけど。でもおまえが危険なことをすることだけは許さない」 「…………」  俊は唇を噛みしめて、桐谷を睨んだ。 「俊、アンダーグラウンドの世界はおまえが思っているより深い。とてつもなく深いんだ。おまえはまだその表面を軽く撫でただけに過ぎない。……おまえがどれだけ綿密に計画を立てて復讐をしようとしても、絶対に不可能だ」

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