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第45話 行為のあとで
桐谷の腕の中で、気を失うように眠りについた俊の顔を見つめる。
激しすぎた情交に疲れ切って眠る、愛する人のなめらかな頬にそっと触れて、桐谷はぽつんと呟いた。
「ごめんな、俊……」
ムチャをして。
本当ならこんなふうに体を重ねるまでには、もっとゆっくり時間をかけて、少しずつ段階を踏んで行かなければいけないんだろう。
好きだと告白して、普通の恋人同士のように一緒に出掛けたり、食事をしたりして、手を繋いで……。そっと触れるキスをして、やがて大人のキスを交わす。
そうして初めて結ばれる。優しく壊してしまわないように、そっと……。
本当はずっとそんなときを夢見てた。
おまえはオレのかけがえのない宝物のような人だから。
……でも、待てなかったんだ。
これ以上、岬に、アンダーグラウンドの世界に、かかわってしまうと、おまえはボロボロにされてしまう。
闇の世界の底なし沼に足を取られたら、手遅れになってしまう。助けることができなくなる。
頬を撫でていた手で、柔らかな髪に触れる。サラサラと心地良い綺麗な髪を何度も撫でながら、桐谷は俊の寝顔に問いかける。
「届いたかな、俊……」
オレの思いは――。
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