46 / 72
第46話 翌朝
俊が目を覚ましたとき、最初に飛び込んできたのは、見慣れぬ遮光カーテンの隙間から差し込む日の光だった。
…………?
頭はまだ半分眠りに捕われていて、記憶がうまく繋がらない。
俊は部屋の様子を見ようと、寝返りをうった。
「いたっ……」
途端に痛みが体を走り、一気に昨夜の記憶がよみがえった。
……そうだ、僕、昨夜、先輩と……。
思いだすと、どうしようもない恥ずかしさに襲われた。
先輩はとても強引だった。いつもの優しい先輩とは思えないほど……でも……。
俊にとって、それはなにもかも初めての経験だったけれど、決して嫌ではなかった。
……それどころか、僕は先輩と一つになれて、とても幸せで……。
事件のことさえ、頭から消えてしまうほどに、彼に抱かれているひとときは幸せだった。
そして、意識が途切れる前に、桐谷が囁いた言葉が俊の耳朶に今もはっきりと残っている。
『愛してるよ……俊。別の道をオレと歩いてくれないか? おまえの家族にならせて……』
桐谷先輩……。
俊の目に涙が滲んできて、慌ててそれを拭った。
……そういえは、先輩はもう仕事に行ったのかな?
寝室にはいないし、扉の向こうにも気配はない。
だいたい今、何時なんだろう?
部屋を見渡すと、ベッドサイドにある小さなテーブルに、時計が置かれていた。
時刻は午前十一時十分。
「もう昼前だ」
俊は呟くと、痛みに悲鳴を上げる体を騙し騙し、半身を起こした。
ともだちにシェアしよう!