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第49話 思い人②
俊を抱いた翌朝、隣で眠るあどけない顔をずっと見つめていたかった。
彼が目を覚ますときには傍にいてあげたくて、仕事を休もうかと思ったくらいだった。
しかし、そういうわけにはいかず、まさに後ろ髪を引かれる思いで、眠る彼をそのままに仕事へ出かけた。……メモと、俊に渡すために作った合鍵を置いて。
夜遅く仕事を終えた桐谷は、かすかな期待を抱きつつ自宅へ帰ってきた。
だが案の定というべきか、期待は叶わず、部屋に俊の姿はなく、桐谷はがっくりと肩を落とした。
それでも作って置いたオムライスは残さず食べてくれたみたいで、お皿もきちんと洗って置かれていた。
引き裂いたシャツの代わりに用意しておいた桐谷のトレーナーも着てくれたようだ。
合鍵も受け取ってくれたみたいで、胸を撫で下ろし、気持ちが少し浮上する。
とにかく完全に拒絶されたわけではないようなので、すぐに俊に電話をかけようとして、自分が彼の電話番号を知らないことに思い至った。
桐谷の番号は、以前、料理を届けたときに、電話番号をメモした紙も一緒に紙袋に入れておいたので、俊は知っているだろう。
だが桐谷のほうは彼から電話が来ない限り分からない。
そうなると、あとは俊のマンションへ直接訪ねていくしかないのだが、その次の日から仕事で警察に泊まり込む生活になってしまった。
今日ようやく事件が解決を見て、五日ぶりに自宅に帰って来れたのだ。
桐谷は小さく吐息をつくと、腕時計に視線を落とした。あと少しで日付が変わろうとしている。
俊はもう眠っているかな……。
明日は絶対に会いに行こう。
俊のあどけない寝顔を心に浮かべ、桐谷は強く思った。
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