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第63話 愛し合う二人
食べ終わった食器を洗ってから、俊は再びリビングのソファに腰かけた。
今、部屋の主の桐谷は仕事で不在だけれど、彼が日々生活している部屋には彼の気配がそこはかとなく感じられる。
ソファにゆったりともたれて、愛する人の香りがふわりと残る空間に身をゆだねる。
幸福感を噛みしめているうちに俊は眠くなってきた。
昨夜は今日のことを考え、興奮してしまってよく眠れなかったから。
何度か小さなあくびを繰り返しているうち、まぶたが重くなってきて俊は眠り込んでしまった……。
ガチャッとドアが開けられる音で、俊は目を覚ました。
……あ、いつの間にか眠っちゃった?
けっこう長い時間うたた寝してしまっていたようで、リビングはもうすっかり暗くなっている。
「俊?」
桐谷の声が聞こえ、ダイニングキッチンの明かりが点いた。それからすぐにリビングの扉が開けられて、
「俊? 真っ暗じゃないか、どうしたんだ?」
少し心配そうな声とともに電気のスイッチが入れられた。
まばゆい光がリビングに降り注ぎ、俊は眩しさに目を瞬いた。
「あ、先輩。おかえりなさい。……ごめんなさい、ちょっとうたた寝しちゃって」
「寒くなかったか?」
「大丈夫です。暖房が暖かかったから。……先輩、お仕事お疲れ様」
そう言って微笑むと、桐谷はソファの傍まできて俊を強く抱きしめた。
「先輩……?」
「……オレ、すごい幸せ。帰ってきたら俊がいてくれるなんて」
俊の肩口に顔をうずめて桐谷が言う。
「桐谷先輩……」
「オレ、おまえのこと絶対に大切にするから、これからもこんなふうにオレのこと待っていてくれるか?」
「はい……、はい。先輩」
俊も桐谷の背中に両腕を回して、彼を抱きしめ返した。
会えなかった長い長い時間と、繰り返した擦れ違いを塗りつぶすように、愛し合う二人はしばらくそのまま抱きしめ合った。
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