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第64話 二人だけのクリスマス・イブ

 桐谷に続き、俊もお風呂に入り、出てきたら、ダイニングのテーブルにはご馳走が並んでいた。有名レストランにケータリングを頼んでいたらしい。  冷蔵庫に入っていた高そうなワインは、やはり今夜のために買っておいてくれたものだった。ピンク色のシャンパン。  俊はグラスに注がれたシャンパンを飲むと、瞳を輝かせた。 「わ。おいしー」 「だろ? アルコールが苦手な俊でも、これなら気に入ると思ったんだ」  桐谷が満足そうに笑う。 「すごく飲みやすいです。でもなんか飲み過ぎて酔っ払っちゃいそう」 「遠慮なく酔えばいいよ。オレが責任持って介抱してやるから」 「……先輩、なんか目つきがヤラシクなっていませんか?」 「あ、分かる? そりゃオレだって男だもん。恋人が酔い潰れたら、それにかこつけて、いろいろエロいことしたいって思うのは当然だろ?」 「先輩……」  あまりにもストレートな答が返ってきたので、俊のほうが恥ずかしくなり、真っ赤になった。 「ほんとかわいいな、俊。食べちゃいたいくらいっていう言葉がぴったりくるよ」 「先輩、恥ずかしすぎるからやめてください……」  そんなセリフをサラッと口にできるなんて、桐谷先輩、ほんと刑事よりもホストのほうが向いてるかも……。  そんなことを考えているうちに、俊はふとあることに思い至った。 「……ね、先輩、先輩が刑事になったのって、もしかして僕の事件があったからですか?」  俊の問いかけに、桐谷はシャンパングラスを手に、しばし思案し、やがてゆっくりとうなずく。 「……そうだな。刑事になっても、オレが直接事件の担当になれるわけじゃないけど、警察組織に入ったらいろいろ情報は入るだろうし、オレなりに事件を調べたかった。それに、行方が分からなくなった俊を見つけることができる可能性も高くなると思った。……これは見事に的中して、おまえと再会することができた……」

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