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第65話 二人だけのクリスマス・イブ②

「桐谷先輩……」  俊の胸に暖かいものが込み上げる。  桐谷は少し照れたようにシャンパンを飲み干すと、自分のグラスと俊のグラスにシャンパンの残りを注いだ。 「ありがとう……、先輩」  俊はいろんな意味を込めて感謝の言葉を言い、シャンパンに口をつけた。  ピンク色のシャンパンは本当に口当たりが良く、気づけばずいぶん飲んでいる。酔いが回り始めているのか、心も体もふわふわする。  桐谷はアルコールに強いのだろう、ほとんど酔っていないように見える。  顔が赤くなっているのが自分でも分かる俊とは違い、彼の端整な顔はほんの少しの乱れも見えない。 「おい、俊、もっと食えよ。じゃないと体が持たないぞ。……今夜は眠らせないからな」  そう言ってにやりと笑う。  刹那、俊はきょとんとしてしまったが、次の瞬間には言葉の真意が分かって、ボッと音がする勢いで今まで以上に顔が赤くなった。 「……先輩、明日も仕事でしょう?」 「一晩や二晩の徹夜くらい平気だよ。俊とエロいことできるんなら」 「せ、先輩って、実はすごいエッチだったんですね。ちゅ、中学の頃は全然そんなんじゃなかったのに」  恥ずかしさにそんな言葉を返す俊に、 「そりゃ、オレだって中坊の頃はまだウブだったもん」  桐谷はそう言ってにっこりと笑う。 「…………」  俊は照れ隠しにフライドチキンをかじり、グラスのシャンパンを飲む。  すると不意に桐谷の顔が不安げに曇った。 「先輩?」 「俊、オレとするの……嫌か?」 「え……?」 「前にあんな強引な形で、してしまったから……」  さっきまでの笑顔が消えて、桐谷は辛そうな表情をしている。  俊は慌てた。 「そんなことありませんっ。僕だって、先輩としたいっ……!」  思わず力いっぱい叫んでしまい、穴があったら入りたい気持ちになった。  だが、桐谷の顔には笑顔が戻り、真っ赤になっている俊の頬にチュッとキスをくれた。

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