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第67話 そして愛し合う……

「あ……先輩……」  俊の口から零れ落ちた声は、自分でも恥ずかしくなるくらい甘く、切ないものだった。 「好きだよ……俊……」  端整な顔がすぐ目の前に近づいてきて、唇が重ねられる。  何度も角度を変えてついばむようなキスが繰り返されたあと、薄っすらと開いた俊の唇のあいだに、桐谷の舌が差し入れられる。 「んっ……ん……、先輩……」  淫らに口内を舐めつくされ、逃げる舌を捕まえられる。  俊はキスだけで昇りつめてしまいそうになってしまう。  ……先輩って、キス……上手なんだ……。  しびれる頭の隅っこでそんなことを思った瞬間、激しい痛みが俊の心を乱した。  それは、俊が生まれて初めて覚えた嫉妬心だった。  今までに桐谷が付き合い、キスをし、結ばれた女性たちへの激しい嫉妬の痛みが俊の心に込み上げてきたのだ。  俊は両腕を彼の背中へまわして縋りつく。  やだ……いやだ……。他の誰の存在もいやだ。先輩は僕の、僕だけの先輩なんだから……! 「……俊、どうした?」  涙目になっている俊を見て、桐谷が困惑したような表情をしている。俊は彼に縋りつく腕に力を込めた。 「先輩……、僕だけを見てください。他の誰かのこと思い出したり、考えたりしちゃ嫌です……」 「俊……」  桐谷は少し驚いたように切れ長の瞳を見開いていたが、やがてゆっくりと破顔した。 「バカだな……、オレはこんなにも、おまえを、おまえだけを愛してるんだ。他の誰も入り込む隙間なんかないよ……」 「先輩……」  俊の瞳から涙が零れる。 「泣き虫だな、俊は。中学の頃からまったく変わらない」  俊の目元にキスを落とし、桐谷が小さく笑う。

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