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告げられないほどに深い愛16

「ンな、おだててくれちゃってよー。これ以上はナンも出ねえぜ? つか、マジで口に合った?」 「ああ。正真正銘マジだ」 「あー、そりゃ良かった。まあ、俺は自分のメシの味とかはよく分かんねっつか……まあこんなもんかなって感じだけどさ。それよかやっぱケーキが最高だよな」  何てったってお前が選んでくれたケーキなんだからさ!  その言葉を飲み込んで、 「それにしてもお前、甘いモン苦手なわりには毎度毎度よくこんな美味いケーキを選んでこれるよな?」  それだけは不思議! といった表情で紫月は感心顔をしてみせた。鐘崎はフッと笑むと、 「そりゃお前、愛だろ?」  ごく当たり前のように平然と言ってのけたのに、紫月は思わず赤面させられてしまった。  毎度のことながら、本気なのか冗談なのか分からないような、鐘崎の堂々過ぎる発言には困りものだ。一対一ならまだしも、他に誰がいようがおかまいなしに繰り出すものだから、紫月にしてみれば心中穏やかではない。心拍数は速くなり、みるみると染まっていく頬の熱を皆に気付かれまいと必死の形相でいる。 「あー……い……って、おま……」  口をパクパクとさせながらも上手い相槌が出てこなくて焦っている様子は可愛らしいが、同時に気の毒にも思えたわけか、綾乃木がすかさずフォローの助け舟を出した。 「そりゃま、確かにな。ケーキってのは基本甘いものだからな。甘いとくりゃ、イコール愛だろ?」  こっそりとウィンクを飛ばしながら飛燕の方へとタスキを渡す。むろんのこと、飛燕もよく空気を読んでいて、自然と話題を繋げてくれた。 「おお、その通りだ。ケーキも料理も愛がこもってて実に美味い! 最高のクリスマスじゃねえか! 遼二坊はセンスがいいし、紫月の方は普段からウチのおさんどんもやってくれてるからな。つくづく俺は幸せ者だ」  実に自然な流れで和やかな雰囲気へと持っていってくれる。お陰で紫月の方もこれ以上赤面させられずに済んだといったところだった。 「ンだよ、ンだよー! 皆しておだててくれちゃってよー? ンな褒められっと照れるじゃねっか! なあ、遼?」 「そうだな」  二人共、皆に喜んでもらえたことは素直に嬉しいのだろう。紫月は言葉通り照れ臭そうにしながら、鐘崎は口元に自然と浮かんだ笑みがそう物語っている。 「おかわりはいっぱいあるからさ。皆、遠慮しねえでどんどん食ってくれよな!」  白米をよそったシャモジでガッツポーズを繰り出す紫月を囲みながら、一之宮家のクリスマスの夜は和やかに更けていったのだった。 ◇    ◇    ◇

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