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狙われた恋人19

 すると張の方も満更ではなく思ったわけか、みるみると瞳を輝かせながら冰の側に来て、その顎をクイと持ち上げた。 「なかなかに可愛いことを言う」 「……張……さん。俺……本当にここに置いてもらえる……?」 「ああ。ああ、勿論だ! まさかキミが周家でそんなふうに肩身の狭い思いをしていたとは驚きだが、俺としては願ってもないことだ」 「俺、我が侭……だよ? 贅沢な暮らしもしたいし、服とか靴とか流行のファッションにも興味あるし、いろんな物ねだるよ?」 「ふ――、そんなもので良ければ嫌というほど買ってやるさ。なんなら――服や靴だけじゃなく、車でもクルーザーでも、欲しい物は何でも与えてやる」 「本当……?」 「ああ、本当だ。約束しよう」 「そう――。だったら俺、もう迷わない。張さんの為に、そして自分の夢の為にカジノでディーラーがんばるから……!」 「そうか。そうか――! いい子だ」  張は思わず両の腕で冰を抱き締めた。 「張さん……。頼むから周さんを殺したりしないで。もしもそんなことをすれば、俺もあなたも一生あのファミリーに追い掛けられるハメになっちゃう。そんなのは絶対ごめんだよ」 「ああ。キミが俺のモノになるというなら周に手は出さない。俺だって別に周一族と戦争をしたいわけじゃないからな」 「良かった。それを聞いて安心したよ。俺、周さんがやって来たらここに残りたいってちゃんと言うからさ。そのかわり、張さん……俺を守ってよね? 俺だって周ファミリーを敵に回すのは怖いよ。だからちゃんと守って――」 「ああ、勿論だ。俺とてこのマカオじゃ周に負けないだけの自信はある。自信だけじゃなく、金も力もあると自負している。キミは何も心配することはない」 「そう、ありがとう張さん。俺、がんばって張さんのカジノの役に立てるように努力するよ!」 「なんて可愛いことを言ってくれるんだ!」  張はすっかり有頂天になっていた。胸の中に抱き締めた冰の髪をやさしく撫でながら、これからやってくる周がどんなふうに悔しがるかと思うと、それを想像するだけでもワクワクと心が踊るようだった。冰のディーラーとしての素晴らしい腕が手に入るだけでも一先ずは満足だが、ゆくゆくは容姿も美しいこの若者を公私共に自分のものにするのも夢ではなさそうだ。張の機嫌は最高潮だった。  そんな彼の腕の中で、冰もまた揺るがない決意をより強くするのだった。  ごめんね、白龍。でも今はこうするしか貴方を守る術はないんだ。目の前で毒針を撃ち込ませるわけにはいかない……!  例えどんな嘘を並べ立てても貴方を守り通す。そして、俺のついたこの嘘を……貴方なら見破ってくれると信じてるから……!  そんな中、張の部下から周がやって来たという知らせが届いた。

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