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恋敵33

「正直なところ、初めて冰を紹介された頃は単に心やさしい――お前さんにとって癒される存在なんだろうとしか思っていなかった。逆に言えば、裏社会に生きる者の伴侶としては常に護衛が必要なタイプと認識していた。だが、俺の目は節穴だったと思い知らされる。事実、俺らのような人間にとってみれば、冰のようなやさしいタイプは守ってやり甲斐のある可愛い存在だし、お前もそうなんだろうと思っていたが。ところがヤツはとんでもねえ強さと芯まで兼ね備えていやがる。性質の良さと勘働きの鋭さ、頭で組み立てた計略を実行に移すことができる確実な腕前、どれをとってもこの上ない極上の男だと心から感服だ。ヤツほどお前さんの姐として似合いの伴侶はいねえと高揚感が半端ねえ」  お前にそんな伴侶ができたということが誇りに思えてならない、そう言った鐘崎に、周もまた目頭が熱くなるほどの思いでいた。 「それを言うなら俺もまったく同じ思いだ。冰の考えを理解し、側であいつを見守ってくれている一之宮がいると思えばこそ、焦れずにこうしていられるんだ。昨夜のレストランで男たちに囲まれた時もだが、ああいった暴力が降りかかったとしても、一之宮ならきっと切り抜けてくれる。どんなに心強えことか知れねえ――。お前にしたってそうだ。危険な状況に巻き込まれたのは冰も一之宮も変わらねえってのに、紫月が一緒だから大丈夫だとまで言ってくれた。一之宮に対するお前の絶対的な信頼感はお前ら二人が最高の伴侶だということの証だ。そんな親友を持てたことは俺にとって何よりの誇りだ」  周の言葉に鐘崎も照れ臭そうに薄い笑みを浮かべた。 「互いに褒め合ってりゃ世話ねえな」 「だが、俺の本心だ。冰がどう考えてどう動こうとしているのか――なんてことは、お前に言われるまで思いもよらなかった。単にあいつらの身が心配で――無事でいるのか、何が何でもぜってえ取り戻すってことだけに気を取られて……状況を把握するだけで精一杯だった。情けねえ話だぜ」 「今回、お前さんは恋人を拉致された当事者なんだ、身の安全を気に掛けるのは当然だろう。――で、どうする? 冰が残した腕時計から女を辿るのが先か、それとも――」 「もちろん一之宮のGPSを追って二人の無事を確かめる!」 「だろうな。そろそろ着陸だ」  鐘崎はフッと口角を上げて頼もしそうに笑ってみせた。

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