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極道の姐11
持ち込んだ通信用の機材なども所狭しと並ぶ中、普段よりは窮屈を強いられる出張期間となったわけだが、こんなふうに皆でワイワイできる機会も貴重だと、誰もが和気藹々とした日々を送ってもいた。そんな中での出来事だ。夜が更けようとしているのに未だ戻らない周らを心配して、麓では地元住民も巻き込んでちょっとした騒ぎになっていたのである。
「かれこれここを出発してから十二時間が経ちます。予定ではとっくにお戻りになっていていいはずなのですが……」
周の側近である李が深刻顔になる傍らで、
「途中で何かあったのかも知れません。採掘場では落盤なども考えられますし、捜索に出た方がいいかと」
鐘崎組の源次郎も口を揃える。
正直なところ、この辺りは道も細く整備も整っているとは言い難い。往復の途中で脱輪などということも考えられるし、源次郎の言うように落盤の可能性もないとはいえない。
「な、源さん。念の為GPSを追ってみてもらうことはできるか?」
心配した紫月が逸り顔で言う。
「そうですね。遼二さんたちは複数のGPSをお持ちですから、何かあったとしてもどれかは反応するかと。早速に調べてみましょう」
電波的には不安があるものの、スマートフォンの他にも腕時計などのアクセサリーや――それになんといっても彼ら二人には刺青の箇所に密かに取り付けてある特別な探知機もある。仮にし事故の衝撃でどれかが外れたとしても、ひとつくらいは生き残っているかも知れない。
「では我々の方でも追ってみます!」
李と劉は周の方の探索に取り掛かった。――と、そこで驚くべき事実が発覚したのである。
「これは……! まさか何かの間違いじゃないか!?」
あまりの驚きに源次郎が敬語もすっ飛ばした驚愕の声を上げる。無事にGPSが反応したことに安堵したのも束の間、示された位置は本来三人がいるはずのない場所だったのである。
「通信状態が不安定なのか……もしくは機器が狂っているのか……GPSはマカオを指している」
やはり電波の関係でおかしな表示になっているのかと思いきや、李の方でも同じ場所を示しているとのことで、一同は首を捻らされることとなってしまった。
「何だってマカオに……!? まったくの方向違いじゃねえか」
焦る紫月の傍らで、源次郎と李が推測を交互にし出した。
「考えられるのは御三方が何らかの事件に巻き込まれたということでしょうか。可能性が強いのは拉致に遭ったか……」
「もしくは、本当はこの近辺にいらっしゃるが、機器が狂っているのかのどちらかと思われます」
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