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極道の姐16

「状況から考えて、やはり白龍を狙った唐静雨さんの犯行の線が強いように思えます……。もしもそうならお兄様と鐘崎さんを巻き込んでしまったことになりますが……」  周と共にいたというだけで何の関係もない二人までとばっちりを受けているとしたら、申し訳ないと思うと同時に、周の身も大いに気に掛かるところだ。 「催眠剤で眠らされたとのことですが、時間的に考えればもう目が覚めている頃でしょう。暴力などを受けて怪我を負わされていなければいいのですが……」  食事などもきちんと摂れているのか気に掛かるところだ。それ以前に酷い扱いを受けて瀕死の状態ということも考えられる。 「お父様、あまり猶予はないように思えます……。白龍たちの居場所は分かっていることですし、一刻も早くGPSを辿りたいと思うのですが……」  冰としては気が気でないのだろう。逸る気持ちのままにそう口走る。今すぐにでも自ら周を助けに向かいたいと顔に書いてあった。そんな彼の気持ちはよくよく分かるが、何の準備もなしに無鉄砲に突っ込めばいいというものでもない。 「冰君の言う通りだな。だが、助けに向かって俺らが捕まったんじゃ元も子もない。先ずは三人が今どういった状況にあるのかを把握できればいいんだが――」  紫月はそう言って冰を宥めると、 「源さん、外から犯人たちに気付かれずに建物の中の様子が分かる機器はねえか? なんなら音を拾えるだけでもいい」  源次郎に向かってそう訊いた。 「集音器はありますが、それを仕掛けるにはある程度現場に近付く必要があります。あとはサーモグラフィーで人の体温を感知して、建物内にいる人数や配置を探ることも可能ですが、こちらもやはり近付かないことには仕掛けられません」 「だったらドローンに機器を積んで飛ばすってのはどうだ?」 「可能です。ただし、音に気付かれる可能性はあります」  張敏が渡りをつけてくれるのを待ち、犯人たちに怪しまれずに接近するのがいいのか、それとも助けが来たことを解らせて揺さぶりをかける方がいいのか。 「どちらにせよ、危険性は五分五分だな。張敏の準備を待っている間に三人が暴行を受けていないとは言い切れねえし、逆に助けが来たことを知ったことによって、焦った犯人を煽っちまう可能性もある。最悪は始末されたりしかねない」  だが、考えているだけでは拉致があかない。 「とりあえず機器の準備を整えよう。張さんが渡りをつけるのに手惑うようなら、ドローンでの偵察を開始しよう」  紫月は隼にも『それで如何でしょう?』と目配せをすると、隼もうなずいた。 「では私の方ではドローンに気付かれた時の為に踏み込む体制を万端にしておく。皆、準備に取り掛かってくれ」  こうして銃器類の携帯と防護用ベストなどの戦闘準備が即座に進められていった。

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