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チェインジング・ダーリン21

「冰君! 運転代わるか!?」 「いえ、乗ってください! 鐘崎さんを助けなきゃ!」 「分かった! 頼む!」  こうしている内にも鐘崎が撃たれたりしたらと思うと今は一秒でも惜しい。荒い運転ながらも冰は森崎を乗せるとそのまま鐘崎の元へ戻るべくユーターンした。 「鐘崎さん、待ってて! 今行きますから――!」 ◇    ◇    ◇  その少し前、犯人たちが老婦人を人質にとって倉庫を出始めた頃のことだ。周と紫月はバイクで飛行場入り口とは反対側のフェンスの外まで来ていた。むろんのこと李と、工具などを積んだ後続部隊の側近たちも一緒である。 「源次郎さんのヘリからの伝言で、配置準備が完了したとのことです。こちらと連携していつでも犯人の離陸阻止に当たれるそうです」 「分かった。狙撃班の方の配置も問題ないな?」 「はい。飛行場を取り囲むように三箇所に配置済みです」 「よし、そのまま待機だ。俺たちは倉庫に入ったバスの状況を確かめたい。ヤツらに気付かれないよう倉庫の裏手へ回って潜入を試みる」  周がそう言い掛けた時だった。 「氷川! 見ろ。ヤツらが出てきたようだ」  紫月に言われて倉庫の方を見ると、犯人らしき男たちが次々と機体に向かって走って来る様子が見て取れた。双眼鏡で確認すると、どうやら老婦人を一人連れているようである。 「人質を取りやがったか……。だが、カネのヤツがみすみす見逃すわけはねえんだが……。もしかしたら倉庫の中でも簡単には動きが取れねえ状況なのかも知れん」 「怪我人が出たか、あるいは爆発物などが仕掛けられていて動けずにいるのかも知れませんね。早急に確認に当たります!」  李が向かおうとした直後だった。倉庫のシャッターが開けられて、人質たちを乗せたバスが飛行場の入り口へと向かって走り出したのだ。周が今一度双眼鏡で確認すると、運転しているのは森崎のようだった。 「カネの姿が見当たらねえ。森崎にバスの人質を避難させ、カネのヤツは拐われた女性の方を助けに出る算段かも知れん。援護に掛かれるよう準備しろ! 狙撃手はいつでも発砲できるように構えて指示を待て」 『了解』  すると、周の読んだ通り一台のワゴン車が倉庫から猛スピードでこちらに向かって来るのが分かった。 「運転手はやはりカネだな。婦人を助けに来るつもりだろう……ッと! 冰も一緒か」  おおかた自分も役に立てればと鐘崎を制して乗り込んだのだろうが、周にとっては驚かされる光景に違いない。 「冰のヤツ……カネの言うことを聞かずに無理強いしやがったか――?」  今のような緊急事態の事件下では、場慣れしていない冰は足手まといになるという以前に鐘崎が進んで危険にさらすわけがないからだ。おそらくはバスで避難しろと言われたのだろうが、冰が自分も一緒に行くと言って押し通したのだろう。とはいえ、周とてその鐘崎の大事な紫月という伴侶と共にどっぷりと只中で闘っているわけだが、道場育ちで体術にも優れている紫月と冰とではワケが違う。

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