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極道たちのクリスマスパーティー12

 周の嬉しそうな表情からは、言葉だけではなく本当に喜んでくれているのがよくよく伝わってくるようだ。そんな彼に、冰もまた幸せな気持ちに包まれるのだった。 「よし、冰――。こいつの礼も込めてお前には”愛”を贈らなきゃな?」  周はニッと悪戯そうに瞳を瞬かせると、ちらりとベッドの方を視線で示してみせた。つまり、もう抱きたいという意味だ。 「ん、うん……! いっぱい愛をもらわなきゃね?」  照れながらも素直に”貴男が欲しい”という意に変えてペロリと小さくて赤い舌を出す。そんな”嫁”を心の底から愛しく思う周であった。 ◇    ◇    ◇  一方、鐘崎と紫月の二人もまた、同じように夫婦水入らずのクリスマスの夜を共にしていた。 「お! もうちょいで零時を回るな。クリスマス本チャンだ! ってことで遼、これ貰って!」  紫月がソファの裏にこっそりと忍ばせていた包みを差し出してみせる。 「何だ。まさか俺にか?」 「ん! お前がくれたプレートからしたら月とスッポンだけどさぁ、俺からの日頃の感謝の気持ち!」 「開けていいか?」 「もち! 似合うと思うぜ?」  鐘崎は驚きながらも渡された包みをじっと見つめている。黒地をベースにして玉虫色に輝くラッピングペーパーがブラックダイヤを連想させるようだ。リボンの色はむろんのこと紫で、包みにまで二人のことを連想して選んでくれたのが一目で分かるものだった。 「解いちまうのが勿体ねえな……」 「何言って! 包みなんか解くもんなんだからよぉ」 「だがこいつは俺とお前をイメージしてくれたものだろうが」 「あ、分かった?」 「当たり前だ」  紫月は照れ臭そうにしながらも、二人の色合いで選んだラッピングに気付いてくれたことを嬉しそうにしている。 「じゃ、破らねえように開けねえと!」  丁寧にシールを剥がし、言葉通り破かないように包みを開ける仕草を、紫月は愛しそうに見つめていた。 「おお、こいつはすげえ! 名刺入れだな」  小さな箱の中から出てきたのは黒い革が滑らかな名刺入れだった。 「今使ってるのがだいぶくたびれてきたって、ちょっと前にそんなこと言ってたのを思い出してさ」 「そうか。そういや替え時だと思っていたが、こういうのはつい後回しになっちまって自分じゃなかなか買いに行く機会がなくてな。いや、まさに絶好のプレゼントだぜ!」 「痒いところに手が届くって感じだろ? さすが俺! なんちって」  紫月が自慢する素振りで胸を張ってみせる。そんな仕草が堪らなく愛しくて、鐘崎は珍しくも破顔するほどクシャクシャな笑顔で紫月を抱き締めてしまった。

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