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孤高のマフィア43

「ちょっと……落ち着きなさいよ! まるっきりワケが分かんないわよ! 一からちゃんと説明して!」  男は札束と愛莉を抱えながら『ヒャッホー!』と奇声を上げてベッドへとダイブした。そして冰らを例の闇カジノで遊ばせてやった経緯を順を追って話して聞かせた。 「なあ、もしかするってーとよ! 香山なんぞからはした金を搾り取るより、ものすげえ金が手に入るかも知れねえぜ! あのガキ、見た目は優男だが空恐ろしい雰囲気を持ってるっつーかさ。肝っ玉も据わってるし、とにかく只者じゃねえのは確かだ。性質もいいヤツそうだし、がめつくもねえしよ! あのガキと組みゃ大儲けできそうだ」  大陸に売り飛ばすなんてもったいない。こうなったら当初の予定を変更して彼を仲間に加え、ひと商売企んだ方が絶対にいい。男はすっかり趣旨替えする方向に頭がいっているようだ。 「仲間に加えるって……急に何言い出すのかと思ったら! アンタのお気楽さったら……相変わらずバカ丸出しなんだから! 第一、その冰って子が素直に『うん』って言うかも分かんないのにさぁ。それにもしもその子が承諾したとしても里恵子ママのことはどうするつもりなのよ!? きっと今頃はママのいい男性が血眼になって行方を捜してるはずよ。アタシとしては早く二人を香山ちゃんか海外の輩に引き渡しちゃった方が無難だと思うけど! ねえ、絶対にそうすべきよ!」  男に比べれば愛莉の方がまだマトモなようだ。だが男はすっかりその気になっていて、聞く耳を持たない様子である。 「大丈夫だって! こうなりゃ本格的にマカオあたりのカジノに行ってみるのもいいかも知れねえ! いかんせんウチのカジノじゃ内部で金が回るだけで採算は取れねえだろ? やっぱ他所から金が入ってこねえことには損だしよ! あのガキンチョと一緒に稼げるだけ稼いで、そのママって女のオトコが乗り込んで来たら速攻香山に引き渡して、全部ヤツのせいにすりゃいいさ! 万が一拉致の実行犯ってのがバレたとしても、俺たちは香山に脅されて仕方なく二人を拐って来たことにすりゃいいんだよ!」  という以前に、拉致の実行犯だと疑われたところで知らぬ存ぜぬで通せばいいと男は得意顔だ。最初の予定とはまったくかけ離れた状況に愛莉は溜め息が隠せない。だがまあこうなってしまった以上は後に引けないのも確かか。男の言うようにいざとなったら全てを香山のせいにすればいい、今はそれで納得するしかないと思う愛莉であった。  そうして次の日の夜がやってきた。男は様子見をする為にも連日で冰と里恵子をカジノへと案内すると、今夜は愛莉にもその腕前を見届けろと言って裏手の事務所へと連れてきた。 「見ろ! 今日の昼間に即席で仕掛けたモニターだ。各テーブルに取り付けたから、ここで見張ってりゃあのガキンチョがどんな動きをするのかが一目瞭然ってわけよ。本物の金の卵だったら大儲けできるぜ!」  半信半疑ながら、愛莉も促されるままにモニターへとかじり付いた。

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