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第2話
店番をしていた目付きの悪い若い兄ちゃんに4回やらせてくれと声を掛けた。
「毎度あり、800円になりま……」
俺の顔を見るなり固まってしまった。
「カシラすいません。これには深い事情が。タダにしますんで兄貴には内緒にして下さい」
ぺこぺこと頭を何度も下げ、額からは冷や汗がだらだらと流れていた。
この兄ちゃん、どっかで見た事があると思ったら、根岸の舎弟だ。付き合っている女に子どもが出来て金が必要だって聞いた事がある。だから根岸に内緒でアルバイトに精を出しているのか。
「お前名前は?」
「はい、島本といいます」
「そうか」
財布から万札を取り出しそれを一太の手に握らせた。
「兄ちゃんに渡せるか?」
「うん」大きく頷くと小さい手を伸ばし金を渡した。
「釣り渡すから待ってろな」
「釣りは小遣いにしろ。根岸に言いにくい時は俺に言え。困った時はお互い様だ。遠慮することはない」
「カシラ……」
泣く事でもないのに万券を手にしたままボロボロと泣かれてしまった。
何気に視線を感じ下を向くと、目をキラキラと輝かせる一太と目が合った。
「かっこいい‼」
「おぅ、ありがとな」
「ちゅごく、かっこいい!」
「おぅ」
一太にかっこいいを連呼され、背中がむず痒くなってきた。
「カシラにお子さんがいたなんてはじめて知りました。パパにそっくりで本当に可愛いっすね」
まだ息子じゃないんだ。とは流石に言えず、
「いゃあ、まぁ、その・・・・」
言葉に詰まってしまった。
そしたら一太が不思議そうに首を傾げながら、
「いちたの・・・・パパ?ほんと?」
そんなことを聞いてきたからさらに焦った。
俺だって一日でも早くみんなに堂々と言いたいよ。
一太はママ思いの優しい子で、自慢の息子だってな。
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