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第3話

「釣り針を垂らして、ヨーヨーの輪っかに引っかけるんだ。簡単だからやってみろ」 「うん」 しゃがみこみ実際にやりながら一太に教えると、おっかなびっくり釣り針を水面に垂らした。 欲しい色のがあるのか、なかなかひっかけようとしない。どれを取るか迷っているうち、こよりが水に濡れプチと切れてしまった。 ギャン泣きされると身構えたが、一太は泣かなかった。すぐさま別の釣り針を垂らすと、一番おっきい水玉模様のヨーヨーを釣り上げた。 「すごいな一太」頭を撫でてやると「おじちゃんあげる」そのヨーヨーを俺にくれた。 「いいのか?」 「うん」 大きく頷くとまた釣り針を垂らした。 でも一太は流れるヨーヨーをじっと眺めるばかりでなかなか釣ろうとしない。 「どうした?」 顔を覗き込むと、鼻を啜りながら目を手の甲でごしごしと擦っていた。 「おじちゃんが代わりに………いてぇな」 頭をグーで思いっきり叩かれた。 「てめぇー、俺を誰だと思ってるんだ!」 すぐに立ち上り後ろを振り返ると、 「弾よけも付けずうろうろしているあなたが悪い」 腕を前で組み仁王立ちする橘がそこにいた。 「は?俺はガキじゃねぇ」 「誰もあなたのことは心配していませんよ。私が心配しているのはいずれ龍一家の跡目を継ぐことになる一太くんの方です」 普段の橘も怖くて頭が上がらないが、未知と一太のことになるとその2倍はおっかなくなる。

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