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第4話
俺には厳しい癖に未知や一太には相当甘い。
「それにあなたは一太くんの気持ちがこれっぽっちも分かっていない」
「あ?じゃあお前は分かるのかよ」
「分かりますよ。あなたや若い衆に迷惑を掛けるから雨が降る前に家に帰ってくるようにママに言われたんです。だからあと五分。少しでも長く、あなたと一緒にいたいからに決まっているでしょう」
「そうなのか」
一太に聞くと、恥ずかしそうに顔を真っ赤にし俯きながら頷いた。
「おじちゃんも一太と同じだ。あと五分。いや、ずっと一緒にいたいよ」
今にも泣きそうになりながらも、一太を抱き上げギュッと抱き締めた。
藍色の空を色鮮やかに彩る花火の音にびっくりしたのか、肩をぶるっと震わせ一太が首根っこにしがみついてきた。
「おじちゃんと橘がいるだろう。だから怖くない」
頭を撫でてやると、ようやく安心したのか、両方の耳を手で塞ぎながらも、じーと夜空を見上げていた。
「おじちゃん、あのね」
「あ?」
ちょうど打ち上がった花火の音で一太の声が搔き消されてしまった。
「悪い、もう一回言ってくれ」
「うん、えっとね」
一太がぐんと背を伸ばした。
「おじちゃん、いちたのパパになってくだちゃい」
聞こえるように耳に向かって大きな声を上げる一太。
「おじちゃんでいいのか?」
「うん!」
嬉しいことをいうじゃねぇか。目がうるうるしてきた。
そんな感動的なシーンに水をさしたのはやはり橘だった。
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