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第6話
雨足が早くなり、見物客は蜘蛛の子を散らすように屋台の軒下に駆け込んでいった。
「遥琉」橘に肩を揺すぶられはっとして我に返った。
「ちゃんとしがみついてろよ」
「おじちゃんだいじょうぶ?」
つぶらな瞳が心配そうに見上げていた。
俺を誰だと思っているんだ。
「おぅ、心配するな」
首にしがみついた一太の腰を片手でしっかり抱き締め、もう一方の手で大事な戦利品のヨーヨーのゴムの束を握り締め、橘と共に雨のなかを走り出した。
「俺は一太と、一太のママが大好きだ。今後二度とはなしゃんとは寝ない。約束する」
「ほんと?」
「当たり前だ………いて、橘!」
後ろから頭をまた叩かれた。
「しゅあないだろ、嘘を付くわけにはいかねぇだろう」
「あなたとの関係を精算しろと?私がいなければ何も出来ないくせに」
痛いところをつかれ、反論すら出来なかった。
背後からはドンドンと花火の音が響いていた。
「分かったよ。一生俺に付いてこい!その命俺に懸けろ!」
どうせ口では敵わないんだ。
自棄糞になって叫んだら、
「いちた、わかった。おじちゃんすき」
腕のなかで一太が機嫌よくニコニコと笑っていた。
「一太くんに一本取られましたね」
「だな」
これには俺も橘も笑うしかなくて。
5分で、喧嘩して仲直りしてーー
「あっ、ママだ!」
マンションのエントランスの前で傘もささず未知が心配そうな顔でタオルを抱き締め、俺たちを待っていてくれた。
橘との関係をちゃんと話して、それからプロポーズしよう。
出会ってまだ1ヶ月だけど、好きになっちまっちまったんだ。彼も一太も失いたくない。
俺を一太の父親にさせてくれと頼もう。
こうなったら当たって砕けろだ。
読んでいただきありがとうございました。
また、葉月めいこ様、素敵なイラストを描いていただきましてありがとうございました。
出会ったころの一太くんと遥琉さんをこうして書けて幸せでした。
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