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第3話
「へぇ、サンタには笑うんだ」
「え?」
「ずっと下向いてるよな?緊張してるんだと思って、俺、アホみたく一人で喋ってさ…」
「ちが…」
「まあ、いつも通りだ。お前はいつもそうやって下向いて、どうせスマホだろ?で、サンタ来たら顔上げて笑うとか。じゃ、そのサンタと付き合えよ」
「…え、あ、ごめん…僕…」
「もういいよ。お前無理してたんだよな。いいんだ、薄々感じてた。何かもう、腹も減らねぇわ。帰ろ?」
貴臣が立ち上がった。
「に、しの…くんッ…」
「行くぞ」
「待ってッ…」
「行かないのか?」
上から降ってくる貴臣の刺すような声に体が凍りつき、膝が震えて立ち上がれない。
「食って帰るならご自由に」
貴臣はナフキンを椅子にポンと放るとレジに向かった。
萃はそのまま、動けなかった。
―違う…違うんだよ、西野くん…僕は…僕……
椅子に座ったまま、はらはらと涙をこぼす萃を、先程のサンタが困った顔をして見つめていた………
レストランの席に座ってからずっと俯いている萃の緊張を解そうと、貴臣は一人で喋って盛り上げた。
薄い反応はあったけど、萃はやはり下を向いたままで、時々、顔を上げるだけだった。
―なのに、何でだ??
店内にサンタが入って来て
「メリークリスマス!」
と萃の肩に手を置いて言うと、俺が盛り上げようとしてどんなに話しても下向いて、時々、引き攣り笑いみたいな変な顔見せるだけでまた下を向き、こんな所に来たくなかった、って全身で言ってたクセに、顔を上げてサンタにあの顔で笑いやがった。
俺が今日見たかった笑顔を、大切な萃の笑顔を、何処のオッサンが扮してるか判らんサンタにだけ……向けやがった…
その瞬間、俺は…キレてしまったんだ――
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