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しばらくの間、感傷に浸っていたが 深呼吸し、よしっ、と気合いを入れ手を伸ばしす そう、ほんのコンマ一秒 一瞬 刹那 それぐらいのあっという間の出来事だった 横から手が伸びたかと思えば 鷹が獲物を掻っ攫う姿を連想させるように鮮やかで、忽然と姿を消すレコードに、何が起こったのか理解するまでフリーズしていたと思う 「へ?え゙っ?‥‥無い…って、嘘だろ… あ!ちょっ、そこ待て、待てやーッ」 俺が心の底から求めていたレコードを何食わぬ顔をして持っている奴がいる 「ちょ、お前ッ話し聞けよ」 すかさずその横取りした奴に食ってかかるが まさかの無視 俺の声が聞こえていないんじゃないかと思うぐらい、まったく気にするそぶりもなく奴はレジに直行していく 迷いのない足取りを見て、焦りが募った レジの店員にレコードを差し出したもんだから、いよいよ日本語が分からない奴なのかと焦りがピークに達する 「お、おい!これは俺が先に買おうとしていたやつだって、聞けって、会計も止めろって」 奴の横で抗議するものの 「ありがとーございましたー」 やる気のない店員の声が響き渡った (嘘だろ‥‥) それが合図だったかのようにやっと振り返った男は… 「ぁあ?何か言った?」 ニヤつく顔を張り付け、あっけらかんと言いやがった 俺より若干若い 左目の横に泣きぼくろがありその目も、口の端もキレイに上げて笑ってるが、俺には分かる この笑顔はこちらを見下した笑みだって事を。 「っ、聞いてねぇのかよ!だから~~」 まだ話しをしている途中というのに、ズイッと俺の目の前に今さっき袋に入れられたレコードを見せびらかす 「あっ、これ?あんたが買おうとしてたんだろ? 需要と供給。生産者と消費者。販売と購入。意味分かる?あ~分かんねぇか? 俺が金を払い、物を貰ったの。これにて物品の売買が終了、一件落着!晴れて俺の物。という訳で諦めてね、さいなら~」 怒髪天を衝くとはまさにこの事 初対面でこんなに腹立つ奴に会ったのは初めてだった

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