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*第14話* 父親からの電話

 季節は移り、梅雨も明けて夏の陽気となった頃には、玲旺はアシスタントを卒業し桜華大の担当を任される程になっていた。  学長室の執務机に、玲旺は完成した制服を並べていく。 白いワイシャツに青いリボン、ウエストが絞られたベスト、丈が短めのブレザー。ふくらはぎが半分ほど隠れる丈の、ふんわりとしたフレアスカート。男子生徒にはブレザーとベスト、それに少し細身のスラックス。  どれもフォーチュン既製品のパターンだが、紺青に白のストライプ模様の布地は桜華大特注のオリジナルだった。  アニメに出てきそうな制服だが、桜華大のセンス溢れる生徒達が着たら、よく映えるだろう。   緑川が確認しながらそれらを二体のトルソーに着せると、上機嫌で玲旺の肩を叩いた。 「うん、思った通り素敵ね。これで学校案内のパンフレットにも載せられるわ。服飾科の子達にもこの制服は評判良いのよ。切り替えに間に合わず卒業しちゃう子が残念がっていたわ」 「気に入って頂けて何よりです」  玲旺もホッとしながら笑みを返す。 「でもねぇ、完璧なんだけど、本当はもう一ひねり欲しいところなのよね。あんまりこだわると制服の単価が上がって、生徒に負担をかけてしまうから仕方ないんだけど」 「もう一ひねり、ですか」 「フォーチュンさんに落ち度はないわよ。こちらの事情だからね」  安心させるように笑顔を見せたあと、緑川は内線で「珈琲を二つお願い」と学長室に届けるよう依頼した。それから玲旺に、応接用のソファに座るよう勧める。その間ずっと、玲旺は「もう一ひねり」について考えを巡らせていた。  緑川はソファに腰掛けると、真新しい制服を満足そうにうっとり眺める。  やがて運ばれてきた珈琲に、砂糖とミルクをしっかり入れてから玲旺は口を付けた。留学中は紅茶ばかりだったなと思い出した時、雷に打たれたように閃いて顔を上げる。 「あの。優秀な生徒にだけ、ベストのデザインを自由にしてもいい権利を与えるというのはどうでしょう」  何の脈略もなく唐突に玲旺が提案したので、緑川はコーヒーカップを片手に持ったまま首を傾げた。 「自分はイギリスの全寮制の学校に通っていたのですが、そこでは成績優秀な生徒が監督生に選ばれるんです。彼らだけが制服のベストの布地を自由に選べて、それはとんでもなくステイタスで羨望の的でした」  玲旺が何を言おうとしているのか理解した緑川は、目を輝かせながら話の続きを促す。

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