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世界中で一人だけ④

 目の前の鏡に映る自分が余りに淫靡で、恥じらいつつも余計に感じてしまう。玲旺が何を見ているか気付いた久我が、腰の動きを速めながら耳朶を食んだ。 「いやらしいな。その顔、凄く興奮する」  鏡の中で目が合い、久我の切羽詰まった表情に玲旺も更に昂った。久我は玲旺を追い立てるように激しく突き上げながら、前に手を伸ばす。玲旺の膨らんだ竿を握り、緩やかに扱いた。 「ああッ。あ、あっ。挿れながら触るなッ」 「気持ちいいんでしょ? こっちも弄ってあげようか?」  ピンと勃った乳首を摘ままれ、玲旺は背中を反らす。 「あっ、あっ。や、やだ! 気持よすぎて怖い!」 「ッ……俺も限界」  久我は玲旺の体を起こし、後ろから抱きすくめた。玲旺は首だけ久我に向け、ねだる様に舌を出す。激しく突かれながら濃厚なキスを繰り返し、遂に絶頂を迎えて玲旺は鏡に向かって白濁の液をぶちまけた。 「あ……アッ。あああ!」  果ててしまった玲旺の中を、灼熱の杭が容赦なく掻き混ぜ、穿つ。快楽の極みに久我の性器は脈を打ち、精が迸った。 「桐ケ谷……ッ」  久我の愛を奥で受け止めながら、玲旺は悦びにゾクゾクと体を震わせた。達した久我は熱い息を吐き、優しく玲旺の肩に口づける。 「桐ケ谷の体、少し冷えちゃったな。洗ってやるから、湯に浸かれよ」  壁に手をついたまま尻から白い粘液を掻き出された玲旺は「これ、ヤダ!」と怒ったように前に向き直った。 「あの日を思い出すから嫌だ。あの時の久我さん、凄く冷たくて事務的で、ほんっとに悲しかったんだぞ」 「あー」と久我は参ったように項垂れる。 「あの時は……だって無にならないと、また勃っちゃうだろ。平常心を保つのに必死だったんだよ。ごめんな」 「今日はキスしながら洗って」  玲旺は久我の首にぶらさがりながら、片足を体に絡みつける。 「それだと俺が勃って、お前の中に出して、洗ってるうちにまた勃って、俺達永遠に風呂から出られないだろ」 「いいじゃん。俺は久我さんと何回もしたい」 「はぁ……また可愛いことを言う。でも駄目だ。お前に風邪を引かせたら大変だ」  久我は口づけながら玲旺の後孔に指を入れ、丁寧に掻き出す。重ねた唇の端から、玲旺の甘い声が漏れた。 「ね、一緒に入ろう? とにかく一度体を温めなきゃ」  久我は先にバスタブに身を沈めると、両手を広げて「おいで」と微笑む。物足りなそうな玲旺は、渋々その腕の中に納まった。 「今まで会えなかった分を埋めてもらいたいのに」 「風呂から出たら、またいっぱい抱いてあげるから」  久我は玲旺の髪を撫で、あやすように頬に唇を寄せる。

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