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第2話

車の後部座席には婚約者である紫藤翡翠(しとうひすい)が座っていた。 「あ・・・あの・・・卒業おめでとう。」 「ありがとうございます。」 翡翠はいつもビクビクしながら俺に話しかけてくる。 2歳年上のくせにこんなのでよく専務とか会社は大丈夫かよとか思わずにはいられなかった。 いつも下を向いていて翡翠の顔をじっくり見た事が無い。 この2年で翡翠と会ったのは、ほんの数回で街中を歩いていても気づかないくらい顔を覚えていないのだ。 翡翠の髪の毛ってこんなに薄いブラウンだったかな? 手を伸ばして触れようとするとビクッとして俺の手を払いのけ怯えた顔をして見てくる。 まるで俺が翡翠に何かしようとしているような。 「なあっ、そんなんでこれからどうすんの?俺達、今日から同じ部屋で生活するし明日には結婚の報告を兼ねたパーティをするんだ。」 「えっと・・・ごっ・・こめんなさい。」 「何に対してのごめんなさいだよ。」 俺は翡翠の態度に苛立ちを覚えてかなりキツい口調で自分が思ってる事を言ってしまった。 翡翠は俺を見ずに下を向いたまま少しだけ身体を震わせていた。 本当に俺が何かしているみたいで気分が悪い。

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