屋敷に着くとたくさんの使用人が玄関先に並び翡翠と俺の帰りを出迎えてくれた。 まるで現実とは思えない光景で俺はこれからこの屋敷で暮らしていくんだと思うと不安が込み上げてきた。 覚悟は決めて来たのに・・・。 「笹川様、お荷物をお持ち致します。」 「ありがとうございます。」 翡翠の執事とは違う男性が俺の鞄を持ちどこか作り笑いとも思える笑顔を俺に向ける。 他の使用人にも笑顔に違和感を感じる。 「賑やかだと思ったら翡翠。お帰り。」 優しく笑いかける男性は長身でスーツを着ていても筋肉質な体格が分かる。 モデルみたいだ。 翡翠はそいつを真っ直ぐに見つめて少し頬を赤く染めながら笑い返している。 チクリと胸を刺す痛み。 俺を見て笑いかけてくる事なんて無いのにそいつには可愛らしい顔をして笑うんだな翡翠。 ２人は俺を見ないで楽しそうに話し込んでいるから俺は執事に部屋に案内してもらうように言うと少し躊躇いながらも言われた通りに案内をしようとした。