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第4話
2人は俺がその場から居なくなるのも気付かずに楽しそうに笑って話している。
胸が痛い。
俺は前を歩く執事にどうしてもさっきの男が誰か聞きたくなった。
「なぁっ、翡翠と話してた男は誰?」
「あのお方は翡翠様のご親戚の方で御座います。奥様のお兄様のご長男で緑下基哉(みどりしたもとや)様で御座います。」
執事は俺を見ないで真っ直ぐ前を向きながら答えて来る。
親戚ならあの笑顔は分からなくもないが俺を放置して話し込むとかは理解できなかった。
一応、明日から結婚して同じ様に部屋で寝起きするんだぞ俺を紹介とか普通するよな?
放置するなんて俺には理解できない。
あの場合は、俺から挨拶するもんだろうか?
「こちらで御座います。ご用がありましたなら内線でお呼び下さい。申し遅れましたが私は、慎様のお世話をさせて頂きます。加藤仁(かとうじん)と申します。加藤とお呼び下さい。」
「ありがとう。」
「私はこれで失礼致します。」
加藤はゆっくりと頭を下げると部屋から出ていった。
専属の世話係が付くなんて俺は場違いな場所に婿養子に来たよな・・・。
室内を見渡しながらそう思った。
家具やら装飾品を見たらどれも数十万円或は数百万円はする様な代物ばかりだ。
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