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昇降口まで来て、外履きに履き替える。
あの場から救い出してくれた恩人、生徒会書記の2年千田 裕太 も履き替え、俺の隣に並んで歩き出す。
「凄い状況だったねー」
「あぁ……ありがとう千田。なんであんな事になったのか、俺もさっぱりなんだけど……取り敢えず助かったよ」
「えー分かんないの?当事者じゃん」
寮への道を辿りながら千田は俺に先程の状況説明を求めてくる。夕日が、辺り一面をオレンジ色にしてるなぁなんて、上の空でそんなことを思う。
「だってただ宮代さんと話してただけだし。それなのに突然東舘さんが……いや、あの人の考えが読めないのはいつものことか」
「そうかなー?副会長は読みやすいと思うけど」
空気読まない千田に、読みやすいと言われる東舘さん……突っ込んだほうがいいのか?
「じゃーあ、会長と何の話してたの?成崎くん」
「……共通の趣味?的な?」
「盛り上がった?」
「んー、盛り上がってたのかな……俺は楽しかったけど」
「じゃあそれじゃない?」
少し前を歩いていた千田は、クルリと振り返り花が咲きそうなくらいの華やかな笑顔を浮かべた。
「は?」
「成崎くんと会長が、ふたりで楽しそうに盛り上がってたのが東舘さんは気に入らなかったんじゃない?」
「…………そんなことで?」
ポカンとする俺に、千田は小首を傾げて笑いかけてくる。
「違うかなー?ある種の嫉妬じゃないかなー?」
「……いやいや、そんな事に腹立てられてたらキリがないし……」
「相手が会長だったから、余計にじゃないかなー。」
「……つか、俺はノンケですけど」
「ふふ、東舘副会長に“ノンケだから”って理由は通用しないよー」
千田は何が楽しいのか、鼻唄を歌い始めた。こっちはやりきれない倦怠感を感じているのに。
通用しないどうこうじゃなくて、無理ですって断ってるんだけどな。無理ですが駄目だったら、もう俺の意思なんて関係なく強制的に……いやいやそれこそ無理です。
「愛されてるねー成崎くん」
「女の子相手にそう言われたかったー」
あははーとふわふわした笑顔の千田に、俺も半笑いで返すのだった。
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