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いつも通りの朝。 傘を閉じて傘立てに立てる。靴を履き替え、人の気配が殆ど無くなった廊下を進む。 8時29分。1分前の登校。 いつも通りの校内を進み、いつも通り俺は教室の扉を開けた。 そして、いつもと違う挨拶が俺を迎えた。 「!!お、はよ……」 「成崎くんだ……」 「おはよー……」 戸惑い、よそよそしい態度、いつもより小さな声でみんなが挨拶してくる。視線は合わない。合ってもすぐに反らされてしまう。 「?おはよー」 なんだ?みんなの態度があからさまに変だ。何か小声で言ってるし、何かあったのか? 周囲を気にしながらも机に着いた俺は、宮代さんが運んできてくれたプリントの箱を真後ろの床に避ける。 椅子に座ったところで、チャイムが鳴る。 皆が席に着いても、何故か収まらない違和感。チラチラと俺を見ては隣の生徒とコソコソ話している。藏元も、複雑そうな顔でこちらを見ては俯いて前を向いてしまった。 こんな状況、普通の人だったら気になるよね。居たたまれなくなった俺は、前の席の生徒の肩を叩いて控えめに訪ねる。 「なんかあったの?」 「……あの、…………実は成崎くんが、」 俺? そう言い掛けた生徒の言葉は勢いよく開けられた扉の音で遮られた。 そして、 「成崎ーー!!ついにやったなお前ぇぇえ!!!」 ズッキーが物凄い満面の笑みで、朝っぱらからよく分からないことを言ってきた。 先生、まずは挨拶じゃないでしょうか? 俺の真顔を無視して、ズッキーは両腕を大きく広げて、大袈裟に拍手をしては言うのだった。 「いやぁ先生すっかり騙されてたよ!!遂に彼氏が出来たんだな!しかも大物!!おめでとう!!」 ……………………は? 俺がその言葉に茫然とし凍りついたのは、言うまでもない。

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