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何と返そうか。どう言えば藏元に理解してもらえるだろうか。 色々弁解材料を集めては、1番良さげなものに絞る。 「まぁちょっと忙しいのは確かで、……でも俺以外にも友達つくれたろ?」 「なかなか難しいよ」 「なんで?藏元の性格なら誰とでも仲良くなれるだろう?」 「俺もノンケなんだけど」 そう言われて、同感してしまう俺はやっぱり藏元と同じノンケなんだと思う。 「だよね、ごめん俺が回りの環境に慣れすぎてた。時の流れって怖いね」 「……俺も、成崎に頼りすぎるのはどうかなって思うんだけど……でも今のところ、他のノンケを知らなくて」 藏元は人に迷惑をかけたくないんだろうな。その気持ちは凄い伝わってくる。俺も、助けてやりたいと本心から思えてる。 ここは、知らぬフリでは終われないな……。 「あー……藏元、多分なんだけどさ、もう出来上がってんだよね」 「何が?」 「ファンの集まり」 「ファン??」 「初日、見たでしょ。東舘さんと会ったとき。体育館から出てくる東舘さんを出待ちしてた集団を」 「あー、確かにいっぱいいたね。」 「ああいうファンの集まりは、好きな人を応援するってのもあるけど、虫を寄せ付けないってのもあるんだよね」 「虫……?」 「抜け駆けする奴とか、恋敵、的な人の事」 「へぇ、凄い人達だね」 他人事のように半笑いする藏元に、お前もだよと突っ込みたくなるが説明しなければ伝わらないだろう。俺は一呼吸置いてから言葉を続けた。 「そんな、ファンの集まりが多分、藏元にも出来てるって話」 「……俺に?」 「お前、自分の顔面偏差値分かってる?初日からあんな騒がれてたろ。出来るのは確実だよ」 「いや、でも……だって俺は、……男は友達だし」 「それは俺も充分分かってる。でもここじゃ関係ないんだよ」 「どうしたらいいの」 「どうもできない。でも、藏元がノンケだってまだ殆どの人が知らないし、言っても諦めない人の方が多いだろうから、誤解される言動、行動は取り敢えず気を付けろ」 「例えばどんな?」 「んー……安易に好きって言ったり、肩組んだり、優しくしたり……前の学校でやってた男子高校生の絡みでは絶対に絡むな。お前がやったら、ネコ側だったら勘違いするし、タチ側だったら嫉妬するから」 「ネコ……タチ……小竹から聞いたワードをこんなに早く聞くことになるなんて……」 「ぁやっぱそこまでの深い話もしたんだ?」 「聞いてるこっちが恥ずかしくなったよ」 顔を両手で覆って、くぐもった声でげんなりと喋る藏元が、なんだかちょっと面白い。 「小竹曰く、ファンの集まりを“親衛隊”って呼んだりもするらしい。まぁここはそんな大層な名前まではついてないけど」 「名称までついたら余計やりづらいよ……。……じゃあ、俺と一緒にいたら成崎が勘違いされるってことだね」 察しがいい藏元は、俺が何故ファンの説明をしたのか理解して結論づけた。 ただ、そうだよ~だから一緒にはいられないんだよ~なんて軽く言える筈もなく、俺は説明しておきながら言葉を詰まらせた。 少し間を空けて、それ以上の追求をやめた藏元は話題を変えてくれた。 「……小竹といえば、……熱弁されたんだ」 「……熱弁?」 「ノンケが目醒める?とかなんとか」 「うわ、いらねぇ話までしてるよアイツ」 「成崎がイケメン生徒会と巻き起こすハチャメチャラブストーリーとか、凄く楽しそうに話してたよ」 「あいつ会う度にワケわかんない言葉話すんだよな。つーか、藏元もそんな話は聞かなくていいんだよ」 「俺はもう勢いに呑まれちゃって……成崎はノンケだって知ってたからなるべく聞き流してたけど」 そこで止まった藏元は、何故か少し顔を赤らめている。 嫌な予感がする。小竹のせいで、変な勘違いしてないか?藏元に何を吹き込んだんだお喋り眼鏡! 「……生徒会の人たちと仲良さげだったから、……小竹のいうこと、あながち間違ってもないのか、とか思った」 「やめろ!!その考え今すぐ凍結しろ!何もないから!!ちょっと話す仲、くらいだから!!」 前のめりになってソファーの藏元を見上げる。考えて恥ずかしがるような恐ろしい想像やめろ! 「うん……だよね、成崎の昼休み終わりの反応見れば、迷惑な話なんだけどね……」 その一言に後ろめたさがないとは言い切れず、少し怯む。 藏元に何もないと言いつつ、その昼休みに色々やらかしてしまった。いや、まてまて。俺がやらかしたんじゃない。向こうが勝手にやったんだ。俺は巻き込まれ事故じゃないか。そうだ、落ち着け俺。動揺する必要なんて無いぞ。顔に出すなよ。 「……とにかく、小竹はそっち方面大好きなんだよ。妄想も得意分野だからベラベラ話すけど、あくまであいつの世界だから。聞き流せよ。で、忘れろ」 「あはは、了解。やっぱ成崎と話すとすっきりする。ありがとう」 「これから藏元は大変だと思うけど、俺でよかったらなるべく話聞くから。……人いないときにな」 「……うん、ありがとう」 優しく微笑んだ藏元に、胸の奥が痛んだ。 もっと、俺に出来ることがあればいいのに。 力不足で、ごめん。 ソファーを立った藏元は、玄関に向かって歩き出す。俺もその後を追って玄関に向かう。 「じゃあ、また明日」 「おう」 「……成崎」 「ん?」 「俺は成崎ともっと喋りたいよ」 にこっと笑ってそう言い残した藏元は、俺が何か応える前にドアを開けて行ってしまった。 不意打ちだよ、そういうとこだよ、藏元……。 お前は数少ないノンケ仲間だ。出来るなら俺だって話したいよ。でも、出来ないんだ。 閉まったドアをただ見つめた。

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