28 / 321

28

えぇええ!?嘘、だろ!? キラキラの笑顔で、ズッキーがときめいちゃってるのは置いといて。……気持ち悪い。 クラスの殆どの奴が乙女化してるのも置いといて。 藏元!お前なんて事宣言してんだよ!!言うにしてもタイミングってものがあるだろう!! 「じゃ、じゃあ……王子様も、助けてくれるらしいから……今日の放課後、クラスマッチの話し合いするから決めといてね」 ズッキー口元に指添えるのやめろ!!日誌を抱くな気持ち悪い!!内股やめてぇえええ!! チャイムが鳴って、ズッキーちゃんは乙女オーラ全開で出ていった。既に骨抜き状態の教室から、俺は藏元を廊下に引っ張り出した。 「ぉ、前……!なんであんなこと言った!」 「え……だって、成崎ばっかり大変な思いするなんて変だろ」 うおぉ、その顔やめろ。 拗ねた顔可愛いとか思っちゃっただろ。友達思いに感動したわ。かなり嬉しいけど俺が言いたいことはそういうことじゃねぇよ。 負けねえぞ、俺だけは、イケメンなんかに屈しないぞ! 「それは、……そうするしかないからであって、でも、藏元がすることじゃない」 「大丈夫。俺スポーツ得意だし」 「そういう問題じゃなくて、」 爽やかに笑う藏元に、頭を抱える。 イケメンが、接触する試合に出たら、別の問題が発生するんだよ。いい加減顔の良さに気付けよ!!皆ときめいちゃうだろ!嫉妬するだろ! 気付けば、チャイムが鳴ってまだ1分足らずだと言うのに周囲には藏元ファンが集まってきていた。 やっぱりもうあるのか…… 「……あのな、ノンケ宣言しても諦めない奴のほうが多いだろうし……」 「なら、いつ言ったって同じだろ?」 「変な気を起こす奴だっているってことだよ!」 「成崎に、迷惑はかけないよ」 「俺じゃなくて、藏元が大変だって言って」 「成崎が俺を心配してくれてるってことも分かってる」 俺の焦りを鎮めるように、目を細めて笑いかけてくる藏元に思わず俺も黙ってしまった。 さっきといい、今といい、藏元の笑顔には人を操る魔力があると思う。……魔導師だったりして。 黙った俺から視線を外し、藏元は周囲の人だかりを確認した。 「いっぱい集まってきたね」 「多分全員藏元のファンだぞ……だから言っただろ」 「うん……でもやっぱり、俺は俺の学校生活を楽しみたいんだ」 「ん……?」 「生徒会長みたいに、ね」 「ぁ、うん……?」 「だから、成崎」 後から思えば、藏元は小声で話すことで周囲の注目を更に引き付けていたんだろう。 そして、いつもより声のボリュームを上げた藏元は、俺に最高に華やかな笑みを向けてきた。 「俺と、“友達”になってください」 「…………!!?」 “憐れなイケメン藏元” から “イケメン策士藏元” に名称変更した。

ともだちにシェアしよう!