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確かに、俺が思い付かない手ではあった。 恐れていたのは、藏元ファンと、藏元を取り巻く噂だったわけで、藏元自身が公衆の面前で「友達です」と宣言してしまえば疑う余地がないのだ。 それでも、藏元と仲良くする事をよく思わない人もいるだろうが……大多数の人は、白ならばよし、と認めるだろう。 ただ、俺は未だ納得してないぞ。クラスマッチの選手交代に関して、俺はやっぱり藏元が出るべきではないと思う。 放課後、クラスマッチの競技を黒板に書き出して、みんなが出る競技に名前を書いていくなか俺は藏元の説得を試みていた。 が、なかなか進まない。 クラスメイト数人が、藏元のそばから離れようとしないからだ。 「藏元くん何に出るの?」 「僕同じのに出たいなぁ」 ほら見ろ、ノンケだと言っても諦めない奴がすぐ傍にいたじゃないか。 俺が白けた目を向けても、藏元は動じることなく生徒と接する。 「俺は皆が決めたあとに、人が足らないところに入るつもりだから、先に書いてくれる?」 「えーそんなぁ」 「藏元くんと一緒がいい!」 「成崎くんも何か言ってよ」 見上げてくる可愛い男子に俺は困惑した笑顔で返す。 俺も説得が目的だけど、主旨が違う。君たちがいると出来ないんだよ…… 「皆は、彼氏と相談したんだろ?」 「うん、してきたよ」 「それで?ちゃんと決まってるだろ?そこに書いて」 「成崎くんまで冷たいよ!いいじゃん、藏元くんと仲良くなりたいんだもん!」 「あのね……約束守らないと、彼氏に怒られるよ……」 「後から説得するよ!」 それがなかなか上手くいかないから去年もあんなことになったんだろうが…… 「……じゃあ、」 俺がお手上げ状態になったとき、藏元が席から立ち上がった。 「今から彼氏さんのところに行こっか」 その言葉に明らかに動揺する生徒に藏元は容赦なく突きつける。 「俺と一緒の競技がいいって、話してみよっか」 まじか。藏元、随分強気になったな。その変わり様、一体どうしたんだよ。 回りのアピールの視線に戸惑うことなく提案する藏元に感心する俺とは裏腹に、焦り出す数人の生徒は漸く黒板に名前を書く気になったらしい。 「ううん!彼氏には……ちょっと……あはは」 「やっぱり、彼氏に言われた競技にするよっ」 駄々をこねていた彼らはやっぱり、彼氏を説得する自信なんて無かったんだろう。黒板に向かう姿を見て呆れていると、藏元は勝ち誇ったような顔で俺の顔を覗き込んできた。 「力になれると思うよ?」 「……何お前。今までその人格隠してたわけ?」 昨日まで周囲の対応に悩んでたじゃん。あれは演技だったわけ?すっかり騙されてたよ。藏元がちょっと怖いんですけど。 「違うよ。開き直ったって言って?まだ男子からの好意には戸惑うけど、……全部真に受けてたら一向に進まない気がして……」 「だからって、昨日の今日でキャラ変わりすぎ」 「成崎と友達になるためだよ」 「……は?」 「成崎と友達になりたい。じゃあどうしようって、昨日、一晩中考えて、俺がしっかりすれば一緒にいれるかなって。」 「藏元……」 はい不意打ちきました。 こいつはなんで勘違いしてしまいそうなことをサラッと言うのかね。しかも、そういうことを真顔で言うから尚悪い。 「……はぁー……ごめん藏元。俺なんかのために」 「ぇ、違うよ俺は、俺が成崎と一緒にいたいから、」 「それなのに俺、お前のこと多重人格かよ、詐欺師かよとか思っちゃった。ごめん」 「……酷くない?」 そんな些細なやり取りに、ふたりして笑った。 でもこれで、藏元と一緒にいれる。そう嬉しく思ったのは確かだ。

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