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小さな問題はいくつかあったが、取り敢えずクラスマッチの話し合いはまとまり、2Bの生徒たちは解散する。
俺は黒板に書かれた競技に出る生徒名を、提出するプリントに書き写していく。座らずに教卓で書いていると、傍に藏元がやってきた。特にこれといった用はないらしく、俺が書くところをただ眺めていた。
あーこれこれ。友達って感じ。ここに入学してから忘れてた感覚だよなぁ……
「……何ニヤニヤしてんの」
「ん?……俺?ニヤついてた?」
「うん。やらしいことでも考えてたの?」
「はぁ!?やめろ違うし」
頬杖をついて、藏元は俺の顔を面白そうに見てくる。知らぬ間に上がっていた口角を手で隠しながら否定の言葉を口にする。
「じゃあ何?」
「大したことじゃないよ……、マジで」
「でもニヤついてた」
「……フッ……まぁその、……嬉しいなって、思って」
「何が?」
「藏元といる、何気ない感じの空気が……俺には久しぶりでさ……」
誤魔化そうとしても聞いてくる藏元の押しに負けて、正直に話すと、今度は藏元が数秒黙ってしまった。気になって視線を向けると、微笑んでいた。
「……よかった」
「ん?」
「ちょっと、迷うところもあったんだよ。俺が友達になりたくても、成崎が嫌だったらどうしようって……だから、ホッとした」
「藏元」
本当に、いい奴だなお前。
「何?」
「友達になってくれて、ありがとう」
「…………泣きそう」
「は?」
「成崎それはずるいよ!不意打ちは反則だろ!」
「ぉお前が言えたことかよ!」
目元を潤ませる藏元と、顔を赤くする俺。変な状況にじわじわと笑いが込み上げてくる。
そこへ、帰ろうとしていたひとりの生徒が近づいてきて俺たちを交互に見た。
「……成崎と藏元くん、実は付き合ってんの?」
「「は?」」
「黒板前でイチャイチャしてさ……付き合いたてのカップルみたい」
「してねぇよ!喋ってただけだろ!!」
「雰囲気が仲良すぎるだろ~」
“仲良し”、その言葉に嬉しさと照れ臭さが混在する。
照れ隠しでその生徒を追い払おうとした俺の肩に腕を回して、藏元は爽やかに笑った。
「当然、成崎と仲良いよ」
胸を張って堂々と、それを言ってしまう藏元にからかいに来た生徒だけでなく俺まで赤くなった。
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