40 / 321

40

グラウンドに着くと、既に殆どの生徒がクラス毎に整列していた。 俺って集合とかで最後になること多いなぁ、とどうでもいいことを考えながら2Bの列の最後尾に並んだ。 それから数分後、設置されたマイクの前に開会式を進行する先生が立ち、式を執り行う。開会の挨拶として校長がマイクの前に立つと、キーンというあの耳障りな音が鳴った。 バカでかいハウリングで敵を失神させてたよな……オリシア。 野外で何かするとき、俺は大抵空想の世界にいる。 今日も、小説で読んだシーンを思い出しては、校長の話なんか其方退けで安定して空想を楽しんでいた。 あ、鳶だ。あれが俺の使い魔だったらなぁ…… 俺が空を見上げていると、校長の次に、歓声に包まれて登壇した人が全校生徒を見渡したあと小さく笑った。 「正々堂々戦え。全身全霊楽しめ。」 その言葉に、爆発的に膨れる歓声。俺は青空から壇上の人に視線を移した。明るい空を見ていたせいか、いつもより更に眩しく見える。 「生徒会長宮代 継、クラスマッチ開催をここに宣言する」 わっと盛り上がる生徒たち。きゃーと熱狂する宮代ファン。 みんなそれぞれ楽しそうで何よりです。 よーし、じゃあ、俺も頑張るぞー。 うーん、と背伸びしてから欠伸をする。やる気がないんじゃない。疲れてるんだ。……藏元のせいで。 2Bのチームで一番早く出番があるのはバレーの第2試合。その会場となる体育館に向かおうと歩き出せば、担任及び生徒会との連絡用に学校から支給された携帯電話が鳴った。これは電話のみ使用できるもので、メールやSNSは使えないやつだ。 “ザ・支給品”て感じ。 「……はいー2年B組成崎です」 「声もやる気無いな」 電話口の声に思わず背筋を伸ばして、周囲を確認する。 そして、グラウンドに設置されたイベント用テントの下で耳に携帯電話を当てた宮代さんの姿を視認する。 「見える距離でこの電話使うとか、生徒会長こそ濫用してますね」 「俺は、これも仕事の一貫だからやってるんだよ」 「これが仕事っすか?」 言い訳にしては無理がないか?と鼻で笑った俺に、宮代さんが鼻で笑い返してきた。 「連絡がちゃんと取れるか、その確認作業。他の電話にもちゃんと掛けてるよ」 「……まじすか」 「あぁ。」 「すいません……」 「クク……で、さっきは何してたの」 宮代さんは近くに寄ってくる人たちとジェスチャーや筆談で会話しながら、俺とも電話している。なんて器用な人なんだろう。遠目に見ながら、改めて尊敬する。 「……さっき?」 「開会式のとき。全然違う方向見てただろ」 「あーはは、見られてたのか…………オリシアの事とか、使い魔とか考えてました」 「オリシア?……マイクか」 「そっす。」 「お前空想に没頭しすぎ」 ハハッと笑う宮代さんの笑い声が耳元で聞こえて、なんだかくすぐったい。 「俺もそう思います」 「成崎の空想、嫌いじゃないけどさ」 「?」 「今日は現実も楽しめよ」 「……現実も……」 「仕事も程々に、な」 「じゃあ、ちゃんと盛り上げてくださいね、宮代さん」 グラウンドの、ずっと向こうで微笑む宮代さんに挑発的に笑った。

ともだちにシェアしよう!