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クラスマッチが始まって、競技は多少のいざこざがあれど、順調に進んでいた。 バレーボールで1年と対戦したとき、口論程度の揉め事があり、俺は早速交代で呼び出されたけど……。運良くその試合には勝てたが、次の3年との試合で、2-1で敗れた。 そのあとの俺は、試合の進行状況や結果を生徒会と担任に報告したり、競技中に怪我した生徒や騒ぎすぎて貧血になった生徒を保健室に連れていったりと、当然のごとく走り回っていた。 ある意味、競技に出るより疲れる……。 さすがにぶっ通しはしんどいので、保健室に生徒を送り届けた俺は一息つこうと廊下の踊り場の椅子に座った。 非日常の校内を、はしゃぐ生徒たちが行き交う。会話の内容はさておき、本当に楽しそうに笑いあっている。 そんな光景をボーッと見ていたら、2Bの生徒3人が偶々そこを通りかかった。 「ぁ、成崎くんお疲れぇ」 「んー疲れたー」 「あはは素直ぉ」 「休憩中?」 「んー」 気の抜けた返事をする俺に、ひとりが思い出したように聞いてきた。 「成崎くん、サッカーは見に行ったの?」 「行ってない。ただ、勝ったんでしょ?結果は聞いたよ」 「もー!連絡担当だからって結果だけ知っててもつまんないでしょー!」 「なんで見に行かなかったんだよぉ!」 無茶言うな。俺だってサボってた訳じゃないんだよ。 「藏元くん、凄いかっこよかったんだよ!!」 「へーそう」 「えー冷たくない??友達なんでしょ?」 冷たいとかじゃなくて……。藏元を、かっこ悪いと思ったことがないので、別にかっこ良かったと報告を受けても大して驚かないだけなんだけど。むしろ、でしょうね、くらいの感覚だよ。 「すっごい、上手いんだね!サッカー!」 ……それは初耳だ。彼らみたいな素人が見ても上手いと感じるなら、凄いんじゃないのか? 「藏元くん、絶対サッカー経験者じゃない?」 「絶対そうだよ!でしょ?成崎くん!」 「…………どうだろう。俺は聞いたことない……」 「…………そっか」 俺のつまらない発言に、3人の会話が一気に冷める。 友達なら、好きなスポーツ、得意なスポーツくらい知ってるだろって反応だった。……まぁ、確かに。 「……な、成崎くん、藏元くんは多分、成崎くんに見てほしい筈だから見に行ってあげてね!次の試合!」 「……んー、時間あったらね」 気を遣ってそう言い残すと、3人は行ってしまった。 最初は確かに、藏元と距離を置こうと思ってた。じゃあ今は? 東舘さんに友達と言い切っておきながら、藏元との関係に踏み込もうとしていない。 そのくせ、他人から新しい一面を聞くとなんだか腑に落ちない。 我ながら、面倒くさい奴だな。 疲労と謎の感情に、俺は大きくため息を吐いた。

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