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夕暮れの小道を、宮代さんの後に続いて俺も歩いていく。宮代さんの凛とした後ろ姿を、少し恥ずかしい気持ちで盗み見る。
さっきまで撫でられていた手の感触が、まだ残っている。特に何も言われないし、そんな意識することじゃないのか……?俺の意識し過ぎ?
「……あそうだ。支給された携帯、俺が学校に返しておくから貰うよ」
「ぁ大丈夫っすよ。俺今から学校寄ってくので」
「何か用事でもあるのか?」
「…………ないですけど、でも、寝落ちしたのは俺の責任なので」
「いいよ。先生にはそれとなく理由つけて、返しておくから」
宮代さんはポンポンと頭を撫でて、俺の手から携帯電話を取る。
いやいや、俺そこまであなたに頼れないから。そんな雑用みたいなことお願いできないから。
慌てて宮代さんの袖を掴む。
「いやいや、いいですよ!それくらい、ちゃんと俺が」
「俺はまだ生徒会の仕事あるし、どうせ学校に戻るんだよ」
「仕事あるなら、尚更そんなことやって貰えないですよ」
「もういい加減折れろ成崎」
「でもっすね」
「つーか、クラスマッチは終わったけど、まだ残ってるだろ?」
「……は?」
何の事かと眉を寄せた俺に、宮代さんは腕時計を見せてきた。それでもピンと来ない。
「今の時間だと、第1第2体育館を解放して打ち上げやってるだろ」
「……あ」
「成崎はそっちに参加」
「……そうなると、携帯電話返しに行くほうを余計やりたくなりますね」
「お前なぁ……」
「!うそ、嘘です!体育館に行きます!」
ため息を吐いて振り向く宮代さんに、俺は両手を振って冗談だと否定する。
冗談ではなかったけど、サボり過ぎはいい加減怒られそうなので仕方ないから行くことにする。
「クラスの奴等は、成崎のこと探してると思うし」
「いやー……どうすかね。打ち上げなんて、人がゴチャゴチャしてますから。カップルで過ごしてんじゃないですか?」
「あー……あれは過ごしづらいな」
去年もそうだった。打ち上げ会場中、何処もかしこもイチャつくカップルだらけでそりゃあ過ごしづらかった。またあの空間に行かなければならないのかと思うと、気が滅入る。
「なら、俺と行くか?」
「…………はい?」
予想外の提案に、聞こえているのに聞き返してしまう。
ど、どうしたんだ宮代さん。普段そんなこと言わないのに、今日はやたら甘い事を言ってくる。俺はどう乗り返したらいいんだ。
「じゃ、……じゃあ行きますかぁ!」
勢いに任せて宮代さんの手を握った。思い切って、俺なりにそのフリに乗っかってみた。
すると、宮代さんは俺から顔を反らして、肩を震わせている。
「…………?」
「く……ふ、ははははっ」
「な、なんすかっ」
「成崎も、そんな冗談に乗ることあるんだな」
そう言いながら、手を握り返してくる宮代さんの手は、俺の手より一回り大きい。
「普段ボケの人が多いだけで、俺だってたまには…………」
「ふ、……そうか。」
笑いを引きずる宮代さんに、馬鹿にされてる気になった俺は悔しいから学校近くまで手を離してやらないことにした。
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