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蛇口を捻って、降ってきたお湯は思いの外冷たくて少し温度を上げる。
シャワーのお湯を頭から浴びて、汗や汚れ、ベタベタしたもの全部を洗い流していく。
バスケで怪我した腕や脚は多少の痛みはあったけど、擦らない限りは濡れても耐えれる痛さだと知りそのまま浴びた。
疲労回復と書いてあった入浴剤を入れ、白い湯船にゆっくりと沈み、静かな浴室を見上げる。
今日は殆ど宮代さんに助けられた1日だったなぁ……なんであんなに俺のこと分かってんだろう?俺ってそんなに単純?
髪から滴が落ちて、湯船に波紋をつくった。
…………頭……撫でられた……
宮代さんの大きな手を、優しい手つきを、何気なく思い出す。
………………て、おいっ!!!
何思い出してんの俺!!優しかったなぁ……とか別にいいから!!多分、宮代さんは……その……弟、的な意味合いで、励ますために撫でてくれただけであって、決してそういう……この学校特有のあれこれではなくて……!!
……つか、その辺掘り下げていくと、……冗談であったとしても、俺から、手を……繋いでしまっているのだが……?!しかも、宮代さんは離すどころかしっかり握ってきたし……。結局、普通に手繋いだまま歩いてたし……。
……ははは、いやいや、違うぞ?宮代さんも冗談で、俺も冗談だから。恋人みたいなことを立て続けにやったからといって、全然意識なんてしてないし。ただ何となく思い出しちゃっただけだし。
…………宮代さんって、彼女にああいうことやる人なんだ。
「──じゃないっ!!乙女モードストップ!!気持ち悪いです!!」
色々危険な思考になってきた気がして、俺は自分に向かって大声で否定した。その声は浴室のなかで反響して、大声を出したことをすぐに後悔させた。
このまま暖かい空間にいても余計なこと考えそうだし、……もう出よう。
安全対策として、浴室を後にした。
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