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藏元から解放された俺は、思い出したように髪をタオルで拭く。 「俺風呂上がりで髪濡れてたけど、藏元濡れてない?大丈夫?」 「うん、俺は全然」 「んー、ならいいや」 反対側の壁に寄りかかって、藏元は大きく息を吐くと視線を反らした。 「このあと、……」 「ん?」 「打ち上げのあとの約束、覚えてる?」 「…………も、勿論」 「……成崎、下手すぎる嘘はつかなくていいよ。」 肩を落として呆れられた。 「ぅ、嘘じゃねぇよ!俺の部屋で打ち上げするんだろ!覚えてるよ!」 「それは覚えてるって言わないの。思い出したって言うんだよ」 ド正論過ぎて何とも言い返せない。 ぶっちゃけすっかり忘れてた。楽しみだって、思ってはいたんだけど……今日が忙し過ぎた。 から笑いして藏元の表情を探る。 「……日本語って難しいよね。」 「あれ?言葉遊び好きじゃなかったっけ?」 「うるさいよ」 「ふふっ……」 藏元の笑顔を見て、俺もちょっと安心した。手持ち無沙汰にタオルをたたみながら会話を続ける。 「……で、とうすんの?」 「え?」 「打ち上げ、やるの?やめるの?」 「勿論、やりたい」 「ん」 「ただ、俺もお風呂入ってすっきりしてからにする。」 そういえば、体育館から直接ここに来た藏元は、まだジャージのままだ。 「了解。じゃ、待ってる」 「…………ぁ、」 返事をした俺に視線を寄越したあと、突然口元を押さえて照れる藏元。 俺、なんか変なこと言った? 「ん?」 「……ご、ごめん。今さら気付いたんだけどさ」 「何?」 「し、……下……履いてないの?」 「……は?」 何のことだとキョトンとしていれば、視線は外したまま指で足元を示す。 「……Tシャツだけだったの?」 大きめのTシャツは、太もも3分の1くらいを隠していたため、丁度ミニスカート丈だった。 「…………違うわっ!!どんな変態だ!!ボクサー履いてるっつの!!!」 「!……ごめん、スカート趣味なのかと」 「殴るぞお前」 「ぁ、でも成崎、脚綺麗だから似合ってると思うけど」 どんなフォローだ。それが俺が求めるフォローだと?天然?からかってる? ぐっと拳に力を込めて微笑む。 「火に油を注ぐ~」 「!?なんで!?」 「男なのに、脚ツルツルってどうなんでしょうね?ん?男の藏元くん。思春期でしょ?」 「で、でも最近の女子は毛深い男子嫌だって子も結構いるらしいし!!」 「…………そうなの?」 「聞いたこと、あるよ…………?」 「んじゃ……いいのか?」 「うん、スカートが似合うってありだよ」 「……毛深いと、スカートは関係ないだろ!俺はそもそも男だよ!履かねぇよ!!」 「ごめんって!そういう意味じゃなくて!」 「どんな意味だ馬鹿!!」 焦りつつも笑う藏元の肩を、俺は思い切り叩いた。

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