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「成崎、もしかして、ショートケーキ嫌だった?」
俺が藏元のイイ男っぷりに関心と残念さを感じて黙っていたら、それを無反応と誤解した藏元は不安そうに聞いてきた。
「なわけないじゃん。甘いものならなんでも好き」
「よかった……。でも、なんかちょっと意外。成崎って甘いもの苦手そうなイメージだったから」
「よく言われる。藏元は?そっちこそ苦手そう」
キッチンの棚から皿を2枚出して、パックからケーキを移す。
「うーん……嫌いではないけど、進んでは食べないかな」
「ショートケーキは食べれるの?」
「うん。成崎と一緒に食べたいし」
平然と言う藏元は、皿を受け取ってソファーの前のテーブルに運んでいく。
ああいう発言狙ってないなら、天然?……生まれもった資質?
「……ぁ」
「どうしたの?」
「俺、そういえば晩飯まだだった」
「え!?そうなの!?」
「まぁ……これでいっか」
「よくないだろ!これデザートだから!」
「腹に入ればよくない?」
「全然よくない!!成長しないよ!」
言って、手を上に翳してヒラヒラさせる藏元にイラっとした。
お前……それ、身長のこと言ってるよね?半笑いなのが余計ムカつくんですけど。
「俺より少し身長高いからって調子に乗んな!見下すな!」
「……少し?」
「帰れ!!」
「ウソウソ!ごめんって!冗談!……でも、やっぱりご飯は食べた方がいいって!」
「んー……」
「これから、スーパー行こうか?」
「……いや、大丈夫。あるもので済ませよう」
部屋から出るのもめんどくさい。俺は冷蔵庫を開け、物色し始める。それを見た藏元は、近づいてきて俺の背後に立った。
「料理するの?」
「料理っつーか……まぁ、自己流の?」
「凄いね。俺全然出来ないよ」
宮代さんといい、藏元といい、完璧なようで譲るところは譲る人たちなのか。完璧でも腹立つし、そうでなくても腹立つ。
「……藏元は?もう打ち上げの料理で満腹?」
「空腹ではないけど……成崎の料理、食べてみたい」
そして、ここにも物好きがいた。
俺の料理に、どんな興味があると?摩訶不思議な料理でも作ってると思われているのだろうか。平凡は平凡らしく、平凡な料理を平凡なやり方で作ってますよ。
「有り合わせだから、ショボいのしか作れないよ」
「やった、ありがとう」
何が楽しいのか、藏元は笑った。
ほうれん草、ベーコン、キノコを冷蔵庫から取り出して下準備にかかる。それを隣に立って見ていた藏元は袖を捲って手伝いアピールをしてきた。
「俺も何か出来る?」
「料理しないんじゃないの?」
「自分の意思では無理。でも、成崎の指示を受ければ、出来ると思う」
「ん、論理的だね。そこの棚の一番下にパスタ入ってるからそれ出して。で、鍋に水入れて、…………パスタの袋の裏面に書いてあるようにやって」
「丸投げじゃん!」
おい!と突っ込みながら笑う藏元を、横目で盗み見る。
自分が出来ないことは素直に言って、でも手伝えることを探す。それって、彼女からしたら嬉しいことなんじゃない?顔良くて、性格良くて、運動得意で、相手をドキッとさせられるサプライズとかも出来る。こんな完璧なやつが男子校とか、ほんと勿体無ぇー……
ベーコンとキノコを炒めながらそんなことを考える。
いい匂いがしてきたとき、隣から視線を感じて見てみればパスタを持ったまま藏元はこちらを見ていた。
「……パスタで、何かお困りですか?」
「ううん」
「じゃ何?」
「成崎が料理するなんて、知らなかったなぁって」
「…………?」
ポツリと呟かれた言葉に、俺は首を傾げた。
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