71 / 321

71 過去4

「なりちゃんの寮の部屋は同室者いるの?」 「そのあだ名やめてくれません?」 「ちゅーしていいならやめるよ」 「どうぞ自由に呼んでください」 「俺キス上手いよ?絶対気持ちいいって思わせてあげられるのに。」 「結構です」 「試してみない?」 「そんなお試し求めてないです」 「お試しなんて、なりちゃんだから言ってるのにー」 「………………」 頭のネジが外れすぎてる。これは多分、修理不可能なやつだ。イケメンに自慢発言されるとイラっとするけど、この変人の場合はちょっと可哀想になる。 「で、同室者、いるの?」 「何でそんなこと聞くんすか?東舘さんには関係ないですよね」 「……もう1回」 「……はい?」 「俺のこと、もう1回呼んで?」 「………………東、…………なんで?」 「もぉーーっ!!焦らすなよぉ!呼んでよなりちゃん!!」 「ぅ、うるさいっすよ!東舘さんっ……!」 「ふふっ……さん呼び、新鮮。可愛い」 こ、怖い。突然大声で喚き出す。お菓子買って貰えない子供か!って勢いだった。心臓に悪い。俺全然、この人のこと読めない。誰か助けて。 「……同室者いないなら、」 「?」 「夜這いしよっかなって」 「いるいるいる!!同室者、いますから!マジ何考えてんのあんた!?犯罪だからね!?どこの星から来たの!?言葉の通じる星に帰ってくれます!?」 「あははは焦ってるぅ!」 青ざめた俺を指差して、東舘さんは布団をバシバシと叩いて大笑いしてる。 くそっ……!何なんだこの人っ……!からかってんじゃねぇぞド変態っ!! 「他人の部屋情報で遊ばないでくださいよ……!!」 「でもさぁ」 「あ?」 「同室者とそういう関係になったら、許さないからね」 「…………は……?」 ゲラゲラ笑ってた笑顔は突如消え、冷淡な態度に変わる。 そういう関係……て?つーかまず、許さないって何?なんであんたに俺の行動が制限されなきゃならないの? 「…………あんたこそ、友達いるんすか?」 「えー?」 「回りの人とちゃんとコミュニケーションとれてるんすか?意味分かんないって、そのノリやめてって、言われないんすか?」 「…………」 いくらこの学校が変わってても、俺よりは学校に馴染めてる人でも、この人は変だって感じる人はいる筈だ。親しい人、誰か、この人に教えてやってくれよ。 「…………だからなりちゃんがいいんだよ」 「……はい?」 ボソリと、東舘さんは何かを呟いた。耳障りなくらいの大声出したり、聞き取れないくらいの小声だったり、普段この人の相手をする人は大変だろうな。 「ううん。俺は楽しくやってるからいいの」 「あーそーすか」 微笑む東舘さんには何を言っても勝てそうになくて、雑な返事で諦めた。

ともだちにシェアしよう!