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髙橋って、顔は凄くカッコよくて運動神経も抜群なのに、頭だけ残念だよね。 宮代さんは生徒会長様。いわば、この学校の王子様代表みたいな人だ。容姿も性格も能力も完璧で、ファンもいっぱいいて、恋人になりたい人は山程いる。 渡辺はこの学校色に染まった生徒。髙橋の事が好きとは言えど、生徒会長の色恋沙汰を耳にすれば黙ってはいないだろう。 藏元は、俺と同じノンケ。それなのに、俺が男とどうこうなんて話を聞けば色々複雑だろう。 このように、それぞれの立場があるわけで、生徒会長に懐いている、というグレー表現は誰に聞かれても命取りになりかねないということだ。 「な、成崎くん……生徒会長様と……?」 「違うよー渡辺、髙橋の言葉に惑わされないで。何もないから」 「でも成崎、好きだろ?宮代先輩のこと」 ……好きだよ。好きだけど、人としてってことで恋愛的意味はないよ。この学校で無闇に好きと言う単語を使っちゃ駄目だよ。 「尊敬してますよ」 「でも、宮代先輩は生徒会室とかでよく成崎の名前口にしてるぞ?」 「…………」 髙橋は俺をどうしても危機的状況にしたいのか、次々爆弾を放り投げてくる。俺は迎撃装置も防空壕も持ち合わせていないので、ひたすら逃げるしかない。 「えぇっそうなの?じゃ、じゃあ会長様はっ」 「髙橋いい加減なこと言わないで。偶々でしょ。渡辺も、全部を信じないで」 「いい加減じゃねえよ!ほんとによく言ってるんだって」 朝食を食べ終えて手を合わせて退散しようとする俺に、髙橋は尚も食い下がる。熱くなり始めた髙橋とイラつき始めた俺の仲裁に入るように藏元が席を立った。 「成崎は、会長から見てもいい後輩なんだね」 「…………」 「後輩……」 黙った俺と髙橋の代わりに、渡辺がポツリと繰り返した。食べ終えた食器が乗ったトレイを持って、藏元は微笑んだ。 「髙橋くん、1時間後くらいにグラウンド、でいいかな?」 「……ぉ、おう……」 「何するかは決まってる?」 「……サッカー……とか」 「うん、分かった」 あんなに強気だった髙橋なのに藏元と話すと弱くなる。その対応の格差に若干腹が立つけど、弱くなった原因の1つには藏元の威圧するような微笑みがあるんだろう。俺にはあんな静かな威圧感、絶対醸し出せない。 「成崎、食べ終わった?行ける?」 「ぁ、……うん」 断りがたい誘いを受けて俺はすぐ立ち上がって、トレイを返却口まで運ぶ。 「……あの、……藏元?」 「何?」 「…………その……言っとくけど、まじで宮代さんとは何もないから」 「分かってるよ」 「…………なら、いいんだけど……」 なんだか怒ってる気がする。俺の考えすぎ? 先に返却口にトレイを置いた藏元を追うように俺も置いて、食堂の出入り口に向かう。前を歩く藏元は喋りもしなければ振り向きもしない。 「…………」 「…………」 「……ごめん」 「…………」 気まずい理由なんか分かってないのに、機嫌を取るための謝罪なんて逆効果なだけなのに、無意識に溢してしまった言葉に自分自身でハッとした。藏元は立ち止まったけど、振り返りはしない。 「……成崎のせいじゃないのに、いつも……」 「……?」 「………………」 「藏元……?」 「……1度部屋に戻るよ。グラウンドで、また」 「…………うん」 顔は一切見えないまま、藏元は離れていった。

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