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4時間目終了のチャイムが鳴って、授業終了と共に昼休み開始を知らせる。 授業の緊張と堅苦しさから解放された生徒たちは、談笑しながら昼食のために動き出す。 勉強道具を仕舞って、机の上を綺麗にした俺はこれからの行動について思案する。 授業に全身全霊向かった……とは言えないけど、それなりに集中はしていたので、腹は減っている。でも急いで食べるほどの空腹でもないし、急げるほどの気力もない。 ということで、弁当を食べる時間はかかる気がする。……つまり、職員室に先に行ってズッキーの用件を済ませてしまったほうがいいということ。……が、今度は体が動きたくないと言っている。とんでもなく我が儘な心と体だ。ただ、こんなことを繰り返していてもキリがない。 「はぁ……」 「ぁ、成崎くん、職員室に行くの?」 「んー」 嫌々席を立つと近くにいた生徒が弁当を食べながら見上げてきた。 「ズッキーから逃げる方法あったら教えて」 「あははー成崎くんらしくないねー」 笑って流された。 結構本気で言ってるんだけどね。つか、らしくないって何?俺は逃げない、正々堂々な人だとでも?そんなわけないよ。サボることばっか考えてるからね。俺ってポーカーフェイスってヤツなのかな。 「成崎、」 ため息をつき席から離れると、その声が呼び止めた。その声は、顔を確認しなくても誰のものか分かる。 「お昼食べよう?」 「あー……ごめん、職員室に行ってこないと」 「ぁ、そっか。そうだったね」 「んー……藏元は先食べてて?」 「いいよ、成崎が戻ってくるまで待ってる」 「いいから。長くかかるかもしんないから先に、」 藏元が手に持っている昼食を指差して食べてと伝えていると、慌ただしい足音が響いてきた。 「藏元ーっ」 大声で名前を呼んで2Bに顔を出したのは、髙橋だった。 やっぱり来た。 俺は心の奥底で無意識に思う。 「お昼食べた?」 「ううん、これからだけど……どうかした?」 「ちょっと話があってさ」 髙橋の後ろにはあの休日にいたサッカー部のふたりもいる。 「話ついでに一緒に食べない?……成崎も!」 「俺は用あるから藏元と食べて」 「あそーなの?じゃあ、藏元、行こう?」 「髙橋、俺は成崎を待ってるから、」 「いいから。髙橋、よろしくな」 「おう!またな成崎」 髙橋は藏元の腕を掴んで教室を出ていった。 ……今、藏元は髙橋を“くん”無しで呼んだ。それだけ、一緒にいたってこと。……それだけ、仲良くなったってこと。 ぼんやりと、誰もいなくなったその場を見つめて思う。俺が突っ立ったままでいたら、背後で弁当を食べていた生徒が納得するようにうんうんと頷く。 「やっぱりイケメン揃うと無敵だよね」 「髙橋くんと藏元くん?かっこいいよねー」 「一緒にいるだけで目の保養だよね」 ……グサグサと突き刺さってくる無邪気な言葉の刃。 藏元といるのが俺じゃ似合わないですかそーですか。イケメンじゃなくてすいませんね。ノンケってだけで一緒にいましたよ。気があったんだよ。友達だよ。それが何か? 「……あっ、成崎くんと一緒にいるときも藏元くん、楽しそうだよ?」 遅いよ。あっ、て付け足すように言っちゃってるからね。それに更に傷ついたよ。 「髙橋といるとき、楽しそうだなって、俺も思うよ」 「……だ、だよねー」 「……じゃ職員室行ってくる」 俺がなんとも思ってないと思ったらしいそいつは胸を撫で下ろした。 いやなんとも思わないわけないでしょ。俺だって思春期だよ。見た目がそんなに底辺扱いされたらさすがに傷つくんですけど。手短なところから美容パックでも始めてみる? 少し傷心しつつ、教室を出た。

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