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宮代さんと夕食を一緒にとるようになってから数日、夕食のメニューを考えることが楽しくなっていた俺は、今日も上の空で学校にいた。
今日は何を作ろうか……。宮代さんのハンバーグ作りはかなり面白かったし、最高の一面を見たって感じだったな……。
ぁ、まだ餃子作ってないな!包む工程とかまた苦戦しそう。
……ん?いや、待て待て。
なんで俺、面白くなること期待してんの?料理作って、美味しいと思ってもらうことが一番重視すべきところだろ。となると、宮代さんが餃子好きかどうかが重要になってくる。にんにく控えめ、とかのイメージだな。……なんとなく。
教室でそんな事をひとり考え込んでいた俺は、周囲の生徒から見ると明らかに不自然だった。
なんたって、今、テスト期間中だし、実際今日から、試験開始だからね。皆、誰も彼も勉強してるんだよ。
誰も、テスト勉強そっちのけで、夕飯のメニューを考えてる奴なんていない。
そんな中、俺だけが、席に座ってボーッと虚空を眺めているから、あいつ大丈夫?意識ある?てか生きてる?みたいな空気になっている。
生きてるよ大丈夫だよ。ご心配どーも。
でもね、今さら教科書見たって100点取れないよ。ノート見たって赤点が90点にはならないよ。だからさ、もう瞑想でいいんだよ。諦めも肝心って言葉あるでしょ。俺は変じゃないよ。
「成崎くん、なんか余裕そうだね」
「ん?……そう?」
俺の前の席の生徒が、この空気に耐えられなくなって話しかけてきた。
「今回のテスト範囲、得意なところなの?」
「いやぁ別に……」
「じゃあなんでそんなに余裕そうなの?」
「諦め、ですねー。あとは運に任せるだけっすからー」
「えー?本当にー?」
……何で疑うんだよ。やってないよーとか言ってガッツリやってる人に思われてる?そもそもやってはいるからやってないとは言ってないけど。忘れたりやってないところが出たら、運任せなのは本当だ。
「テスト勉強はそれなりにしたから、あとはなるようになるだけだから」
「落ち着いてるねぇ」
言いながら教科書をめくるクラスメイトに、俺は首を回して凝りを解した。
宮代さんにからかわれながらも勉強教えてもらったし、あとはテスト開始を待つだけだ。
皆の視線を無視して、俺はまた余所事を考えながら、その時を待った。
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