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宮代さんの話をしているあの生徒たちのことは聞き流すとして、宮代さんにはスーパーに行かないよう伝えるべきだろう。
だって、宮代さんがスーパーに行く原因は9割俺のせいだろうから。
宮代さんに連絡を取るため、教室を出てすぐ、扉近くの壁に寄り掛かり、携帯電話を取り出す。
んー……なんてメッセージ送ろうか。スーパーが信仰者に占拠されて……うーん……スーパーに看守が現れて……。なんかしっくり来ないな……。
あまり宮代さんに向かって“ファン”という単語を使いたくないんだよな……。
宮代さんへのメッセージ画面を開いたまま内容を考えていると、画面に影が落ちた。
「難しい顔してるよ?考え事?」
「!藏元っ……!」
驚いた俺は藏元に顔を向け、メッセージ画面を咄嗟に伏せた。
……べ、別に、見られちゃまずいやり取りなんてしてないけどさ?そんな事してないけどさ?なんか……その……藏元が色々誘ってくれてたのに、それ断って宮代さんとここ暫く過ごしてるっていう……罪悪感?みたいなものがあるんだよな……。
いやでもさ?俺だって一応の人付き合いもあるわけだしさ?俺にだってそれなりの予定があるわけだし…………なんか、人気者の自慢話みたいですみませんね。
「今日の午後は何か予定ある?」
「予定は……」
夕飯のメニュー考えるだけかな。ぁ、それと明日のテストに向けてさらっと復習、くらいかな。
「お昼、久しぶりに一緒に食べない?」
「ぇ、」
「え?」
「ぁ……いや」
「あ、もしかして、テスト勉強一緒にしてる人と約束してた?」
「ううん、別にそうじゃないけど、」
テスト期間中はずっと髙橋たちと過ごすと思ってたから、驚いたというか……
「じゃあ、一緒にいい?」
「おぅ、藏も」
「藏元くんっ」
俺の返答に被って、藏元の名前が呼ばれた。見ればその声の主は、周囲の人だかりのなかにいた。俺と藏元は気づかぬうちに、藏元ファンに包囲されていた。
「勉強会で教えてくれたところ、出ました!ありがとう!」
「役に立てて、よかったよ」
「またポイント教えてくださいっ」
「俺でよければ」
ファンに微笑んだ藏元に、当然の如くファンたちは歓声を上げた。
……俺なんかが人気者発言、即行撤回しますね。
これが人気者というやつだ。たったひとりからの誘いを断ったくらいで人気者気取るんじゃねぇよ俺。
つーか藏元、高橋の勉強会に出てたんだ。あれだけファンに戸惑っていた藏元が、こんなにフレンドリーになってるなんて、ファン交流会も考えものだな。
「ごめんね」
「ん?」
「話止めた」
「いいよ別に。つか、ちょっと安心したし」
「安心?何に?」
「勉強会も、ファンとも、上手くやれてそうでよかった」
転校してきたばかりの、環境に戸惑う藏元は、もう過去なのかな。
「なんか、……母親みたいだね」
「馬鹿にしてんのか」
クスッと笑った藏元に、じっとりと睨む。
「だって学校に馴染めるか心配するなんて」
「……はぁー……よかったわぁ」
歩きだしながらもまだ笑う藏元の話に、乗ってやることにする。
「うちの息子、すごく遠慮するところがあるから、回りに遠慮してばかりで浮いちゃうんじゃないかって思ってたのよぉ」
「何それ。俺の母親の真似?そんな話し方じゃないよ」
ふたりでケラケラ笑いながら階段を下りる。
「でも、本当によかったわぁ、私の心配損で。ひとりでやっていけそうで安心したわ」
女口調のその言葉に、藏元は窓の外に視線を向けた。
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